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[私が編集長です]「酒とつまみ」大竹聡編集長

「最近は帰りの電車で寝過ごしてしまう失敗が多い」とホッピーを酌み交わす日々が続く大竹さん

 「おバカな話のみ。一切役に立たない」という酔っ払いたちのゆる~い武勇伝を集めた雑誌酒とつまみ(酒とつまみ編集部)。アルコール性の悲喜劇や、酒場での温かい触れ合いといったエピソードが満載で、ミニコミ誌では異例の1万部を売り上げる。02年の創刊以来から現在まで10号という超スローペースの発刊。しかし大竹聡編集長(45)は「効率の悪いところが、良いところ」と我が道を行く。

 編集部の机の上に無造作に置かれた酒瓶の数々。仕事抜きでも毎日酒に浸るという編集長の大竹さんは「こんな本を作っているからよく勘違いされるんですが、酒豪じゃないんです」と話す。

 酒とつまみは、A5判のモノクロで、約80ページのシンプルな作り。02年発売の創刊号の目次には、「東京横断 ホッピーマラソン」「ゲロ自慢座談会」が並ぶ。最新号ではタレントの玉袋筋太郎さんのインタビュー記事の「ションベンは最近緩くなってきましたね。ア~ッて思った瞬間、ジャ~ッて出てる」「10号だから10合飲んでみた」などなど何とも酒臭い企画が満載されている。

 「酔ってゲロを吐いたり、お漏らしするみたいな話は、男女を問わず結構あるんです。酒場や駅にいるじゃないですか。陽気な酔っ払いたちが。グルメ雑誌はたくさんありますが、僕らは同じ酒を題材にしても、面白さに注目しようと」と趣味同然で創刊に取り掛かったという。

 フリーライターでもある大竹さんを含め、カメラマン、デザイナーの5人が本業を持ちつつ、取材編集から販売までを無償で取り組む。もちろん「企画会議も基本は酒の席」。ヒット企画は、創刊号から4号まで大河連載された「ホッピーマラソン」だ。

 大竹さんが東京から高尾までのJR中央線の全駅で下車。ホッピーを扱う店を探し発見しては飲み続けた。現在は「山手線1周ガード下酩酊マラソン」に衣替え。大竹さんは痛風という“爆弾”を抱えながら飲み歩きを続ける。

 酒とつまみのもう一つの柱が、酒好きの著名人に酒を飲みながらインタビューする「酔客万来」。「僕らがぜひ一緒に飲みたいという人にお願いしている」という方針で、創刊号には今は亡き作家の中島らもさんが登場した。

 ツテはおろか、まだ本もない状態だったが“ダメもと”のラブレター作戦を敢行。あっさりとOKの返事をもらった。大竹さんは「リスクを構わずに出てくれた、らもさんの気持ちがうれしかった」と振り返る。創刊後にらもさんが大麻使用で逮捕されるアクシデントもあったが「酒飲みの雑誌に酒好きのらもさんが登場したインパクトが書店などにはあったようです」と話す。

 書店の生の声を聞けるのも自分たちで足を使ってきたからこそ。創刊当初は大竹さんらが取次業者や書店に飛び込み営業をかけてきた。当初は大いに怪しまれたが、創刊号は初版の500部から約2000部に増刷。コアな人気で順調に部数を伸ばし、最新号でミニコミ誌では異例の1万部を発行するに至っている。

 「ただ、自分たちで本の受注や発送などの作業を行う形式は変わらないので、部数増で負担が大きくなった。編集者としては本が売れるのはうれしいんですが…」当初年4回発行の季刊を目指したが、創刊から5年半が過ぎた今でも10号までしか出せていない。しかし書店からは「よく10号目までこぎつけたな」と褒められるという。

 「効率の悪いところがいいところなんじゃないかと。手作りっぽさを失いたくない」最新号の発行は前号から約11か月の時間を費やした。「次号? 夏ですかね」という見通しだが…。

 ◆大竹 聡(おおたけ・さとし)1963年4月30日、東京・三鷹市生まれ。45歳。都立国立高卒業後、早大第二文学部入学。大学卒業後は出版社に勤務し、求人誌の広告営業などを経て、93年に独立し、大竹編集企画事務所を設立する。フリーライターとして食やビジネスなど多岐にわたる分野に執筆。プロレスラー・蝶野正洋は中学時代の同級生。

 ◆ホッピー その歴史は60年。焼酎の割り材として、1948年にホッピービバレッジ株式会社(本社・東京)が商品化した。ホップが主原料で、風味はビールそっくり。東京近郊の大衆居酒屋では定番で「私の地元の近く(東京・調布市)に工場があるため、扱う店も多く、幼い時から『どんな飲み物なんだろう』と気になっていた」(大竹さん)。キンキンに冷やした焼酎とホッピーを1対5の割合で混ぜるのがおいしい飲み方とされる。痛風の原因となるプリン体がないため、近年の健康志向の影響も手伝って人気を博している。

 [新刊レビュー]

 ▼「我、老いてなお快楽を求めん(団鬼六、講談社、1575円)腎臓病から復活を遂げたSM小説の第一人者が、「性」や「将棋」にまつわる人々を描いたエッセー。人工透析に通う病院でのドタバタ劇も収録。

 ▼「ツキの最強法則(西田文郎、ダイヤモンド社、1890円)大脳生理学や心理学に基づく「ブレイントレーニング」を解説。数多くのアスリートや経営者らを成功に導いてきた「ツキ」とは。メンタルトレーニングCD付き。

 ▼「読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才~激闘編(北上次郎×大森望、ロッキング・オン、1785円)書評界の両雄が、話題の本を語り尽くす。読むべき本は何か、爆笑の全136冊。季刊誌「SIGHT」の対談連載を単行本化。

 ※本欄で紹介の本の書名をクリックしていただきますと、Amazon.comでお求めになれます。

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(2008年5月19日06時00分  スポーツ報知)

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