若者の中には知らない人も多いでしょうが、ちょうど二十年前、岡山にもジャイアントパンダがいました。
一九八八年、瀬戸大橋開通を記念して池田動物園(岡山市)で開かれた「中国三大珍獣展」。目玉として、雄の「振振(シンシン)」と雌の「慶慶(ケイケイ)」が中国・成都動物園からやって来たのです。三月十一日の夜でした。
二頭の到着を取材しました。ケージの中で、しきりに首を動かし愛嬌(あいきょう)を振りまく姿が、目に焼き付いています。
借り受けには、岡山県出身で一九七二年の日中国交正常化に道筋をつけた岡崎嘉平太氏(故人)も尽力。一般公開は三月二十五日から七月五日まで百日余り続き、計約六十五万人が訪れました。
七二年、上野動物園につがいが贈られて以後、常に両国友好のシンボルとして親しまれてきたパンダ。今月上旬に開かれた日中首脳会談では、胡錦濤国家主席が戦後の日本の歩みを初めて積極的に評価。夕食会で二頭の貸与を表明しました。
日中関係の動向は、地場経済にとっても大きなポイントとなります。ジェトロ岡山貿易情報センターなどの調査では、県内企業の中国の拠点(二〇〇七年末)は百七十八カ所。海外進出の六割を占め、対日感情が悪化したり、政情不安が募れば事業面でリスクが高まるからです。
パンダの故郷・四川省で発生した大地震の苦難に中国政府がどう対応するか。チベット問題の行方は。中国製ギョーザ中毒事件の原因究明は。岡山にいても、気にかかります。
(経済部・大森知彦)