ホーム > きょうの時鐘


2008年5月21日

 歴史学者の会田雄次は敗戦後、ビルマ(現在のミャンマー)の捕虜収容所で強制労働に服した。その体験を「アーロン収容所」(中公文庫)に書いている。雨の中を増水した川を渡り、ジャングルを行軍する過酷さは想像を絶する

同書ではビルマ人の無常観が出てくる。「人間のやることはどんなことでも、時と運命によって幻のように消えくずれてしまう」と。仏教国らしい諦観でもある。自然だけが相手ならそれもいいが、人災となれば話は別だ

サイクロン被災から2週間余り。死者は約7万8千人と、四川大地震を大きく上回った。穀倉地帯を直撃したこともあり、同国だけでなく世界的なコメ急騰が心配される。支援物資の横流しもあり食料不足は深刻だ

それを裏付けるように「ジャパンテント大使」が本社などに惨状をメールで伝え、支援を訴えてきた。外電によれば検閲を経ない被災映像も出回っているようで、国民の不満が爆発する恐れもある。軍政が国民監視を強化するという話も聞く

国民を信じない、国民から信じてもらえない政府は、時と運命によって消え去るのみなのか。


ホームへ