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いじめ自殺見舞金:親の思い国に届く 理不尽さ耐え「大きな前進」

20070706sog00m040001000p_size7.jpg いじめ問題について考える集会で、我が子の死の痛みをまじえて講演する森美加さん=福岡県八女市で5日午後8時12分、田中雅之撮影

 学校のいじめが原因なのに、どうして−−。学校外で自殺し、死亡見舞金が支払われなかった遺族の疑問に、文部科学省がようやく答えを出した。日本スポーツ振興センターによる災害共済給付に道を開いた省令改正。5日の発表を聞き、理不尽さに耐えてきた遺族らからは「一歩前進だ」と歓迎する声が上がった。だが、あくまで学校側がいじめを認めることが前提。支給へのハードルは残る。【高橋咲子、土本匡孝】

20070706sog00m040002000p_size6.jpg 省令が改正されたことを受け、会見する森順二さん=福岡市中央区で5日午後8時2分、金澤稔撮影

 「私たちの思いが国に届いた」

 昨年10月、福岡県筑前町の中学2年、森啓祐君(当時13歳)が、いじめを苦に自宅で自殺。父親の順二さん(40)は5日夜、福岡市内で弁護士と共に会見し、安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 今年3月、センター福岡支所から不支給の可能性が高いと伝えられていた。4月に町教委を通じて正式に申請。「町の調査委員会や法務局がいじめの事実を認めたにもかかわらず、支給しないのはおかしい」と、東京のセンター本部まで足を運び見直しを訴えてきた。

 母親の美加さん(37)は、いじめを無くそうと全国各地で講演活動を続けており、5日夜も福岡県八女市であったいじめ問題について考える集会でマイクを握った。講演後、美加さんは「いじめ自殺が社会問題化するまで、文部科学省は後ろ向きだった。いじめが起きる現実に国は今後も向き合って解決策を見いだしてほしい」と語った。

 遺族は学校側の隠ぺい体質とも闘ってきた。美加さんは「学校が事実を隠すのは、多額の賠償請求を恐れているからではないか」と指摘。センターと学校側の契約では給付を受けると、見舞金分は賠償額から減額される。そのため「死亡見舞金が出ることで、学校も何があったか話しやすくなるのでは」と期待を込めた。

 愛媛県今治市立中1年、堀本弘士君(当時12歳)も昨年8月、学校でのいじめを苦に自宅から数キロの道路脇で首をつって自殺。市教委は昨年12月、死亡見舞金の支給を申請したが、センターは今年4月中旬、不支給を通知した。

 これを受け、市教委は5月17日に「(自殺原因の)いじめが学校の管理下であったことは事実なのに、自殺した場所によって支給されないのは制度の矛盾では」として、「不服審査請求」をセンター広島支所に提出。「全国の遺族が声を上げれば、(制度改正へ)一歩でも前に進むかもしれない」とこの請求に同意した弘士君の祖父鹿夫さん(79)は、省令改正を喜ぶ。だが「自殺した孫が戻ってくるわけではない。いじめの相談に行ったのに対策を考えなかった学校や、いじめを止められなかった親たちへの怒りは変わらない」と話した。

     

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