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いじめ根絶「一緒に考えて」 母涙の実名公表 教員志望者ら130人に訴え

 福岡県筑前町の三輪中2年の男子生徒=当時(13)=がいじめを理由に自殺した問題で、母親の森美加さん(36)が11日、埼玉県で教師志望の学生を相手に講演し、実名を公表して命の重さを訴えた。かけがえのない長男が命を絶って同日で丸3カ月。森さんは「いじめをなくしたい。名前を出すことで私たちの思いを強く感じてほしい」と声を詰まらせながら「未来の教師」に語りかけた。

 森さんが訪れたのは大東文化大文学部教育学科の「現代こども論」の講座。同学科の村山士郎教授(教育学)が昨年12月、都内での森さんの講演を録音して学生に聴かせ、その感想文を森さんに送ったことがきっかけだった。「どうしても直接話したい」と後期授業の最終日に急きょ訪問。約130人が聴いた。

 森さんは遺影を抱いて教壇に登り、長男の小学生時代から語り始めた。当時いじめられていた女児と一緒に下校したこともあった優しい長男。その女児の証言を契機に判明したいじめの内容は衝撃的だった。町調査委の最終報告でいじめと自殺の因果関係を認めてもらうことは「二度と繰り返さないための出発点」だったという。

 「自殺する子は弱いというのは大人の視点。子どもは強く生きたかったはず。私たち大人や社会が何人を犠牲にするのか。いじめられる子だけでなく、いじめる子の心の叫びも受け止めることが大事ではないか」

 教師の存在の大きさをあらためて感じた場面も打ち明けた。通夜の日、悲しみに耐えていた弟2人は、訪れた小学校の担任教師にぎゅっと抱き締められ、せきを切ったように号泣したという。

 「教師になっていじめに直面したとき、私たちのこと、今の気持ちを思い出してほしい」。森さんはそう締めくくった。

 命の重さをどう伝えるか。講演後の質疑応答で学生たちは複雑な思いを語った。1年の女子学生(19)は「この世にいじめられていい子はいないと実感した。どう教えたらいいのか」。2年の男子学生(21)は「教師1人だけで問題に向き合うのは難しい。同僚や保護者、地域と一緒に考えていかなければ…」と話した。

■少年実名公表へ

 福岡県筑前町の中学2年男子生徒がいじめを苦に自殺した問題で、生徒の母で実名を公表した森美加さん(36)は11日、生徒の実名も公表することを明らかにした。

 森さんは2月10日に東京で開かれるいじめ問題のシンポジウムに参加し、生徒の実名と顔写真を公表する。以後、各地の講演会などでも公表していくという。森さんは「息子の笑顔と実名を多くの人たちに知ってもらうことで、いじめ撲滅につなげたい」と話している。

=2007/01/12付 西日本新聞朝刊=

2007年01月12日00時37分

     

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