「人件費8割超」訪問介護サービス事業

 厚生労働省の「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」(座長・大橋勇雄中央大大学院教授)が5月20日に実施した介護関係団体からのヒアリングで、全国介護事業者協議会の馬袋秀男理事長は訪問介護サービス事業について、「人件費が80%を超えている」と述べ、介護事業の経営の苦しさを訴えた。

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 馬袋理事長は訪問介護サービス事業について、「慢性的な人材不足だが、二十四時間三百六十五日(利用者を)支えなければならない。しかし、都心でホームヘルパーを集めるには、50万円掛けて一人集まればよい方」と、人材確保が困難を極めている現状を説明した。人材募集広告を出してもほとんど反響がないため、人材紹介業者を利用すると、サービス提供責任者では一人当たり60−70万円、訪問看護ステーションの管理者では100−120万円掛かるという。特に、訪問看護や訪問入浴など在宅にかかわる看護師は、7対1入院基本料の創設で病院に流れてしまい、不足に拍車が掛かったとした。
 こうしたことから、人件費が経営を圧迫しており、「福利厚生費を含めて全体の人件費が70%、場合によっては80%を超えており、これでは事業として成り立たない。介護報酬から(収入を)得ている事業だけに厳しい」と訴えた。

 介護報酬については、2003年度の改定で、サービス一回当たりの収入単価が引き下げられたことや、06年度もさらにマイナス改定が続いたことなどを指摘し、「事業者としてはかなり厳しい経営状況にダウンした」と述べた。さらに、景気が良くなって人材が他産業に流出し、平均賃金も上昇したが、介護業界は介護報酬が引き下げられているため、市場全体から見て「アンバランスになった」とした。

 また、06年度の介護保険法改正で、一つの事業所で不正があると、同一法人のほかの事業所もすべて指定を取り消される「連座制」が導入されるなど、事業者に対する規制強化があったことや、昨年のコムスンの不正問題などで介護業界に対するさまざまな風評が流れたことも、介護事業所の経営状態を厳しくしているとした。

■「特定事業所集中減算」がチームケア阻害

 大橋座長が、「職場の組織として、ケアマネジャーとサービス提供責任者の業務内容が重複しているのでは。うまく組み合わせれば効率化できないか」と尋ねた。
 馬袋理事長はこれに対し、居宅介護支援事業所にいるケアマネジャーは、ケアプランを作成してトータルな介護提供体制を提案し、訪問介護事業所にいるサービス提供責任者は、ケアプラン中の訪問介護を利用者の目的に合わせて計画立案すると説明。「連携は欠かせないし、情報を一極集中することは大事」と述べた。その上で、06年度の介護報酬改定で、居宅介護支援事業所が一つの事業所に集中してサービスを依頼することを防ぐための「特定事業所集中減算」が新設されたことについて、ケアマネジャーとサービス提供責任者が連携体制を組みにくくなったとして、「チームケアに反することが報酬体系にある」と批判した。


更新:2008/05/20 21:31     キャリアブレイン

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08/01/25配信

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