転職のための職業訓練ひろば

失業保険(雇用保険)の不正受給は多い

 発覚した不正受給の例では、多くが「無知による」とされています。しかし、「知らなかった」とは、言い訳に過ぎず、本当は知っていてやっている人も多いのではないでしょうか。
 定年退職者で、働く気が無いのに、退職金のつもりで失業給付をもらう。結婚して専業主婦が実態なのに、家計を助けるつもりで、仕事を探すふりをする・・・そんな例は多いはずです。離職票の偽造など組織ぐるみの悪質例は、新聞沙汰になっていて、ひどいものです。
 不正受給は、年間1万件も発覚していますが、きっと氷山の一角なのでしょう。
雇用保険課長の発言より
 平成13年度の数字がありますが、不正受給については1万783件で、初回受給者との比率で申しますと、0.45%の比率で不正受給があります。金額的には21億8,891万円の不正ということで、支給金額の0.1%です。この不正受給については、主に働いておられたということを申告されずに、給付を受けておられたというケースです。
(02/08/23 第13回職業安定分科会議事録より)

発覚した不正受給の傾向

 密告による発覚が最も多くなっています。バイト先で「俺、失業保険もらっているんだけど。。」なんて、自慢げに話せば、通報されて当然でしょうね。失業手当は、みんなが負担しているのですから、不正受給者によって保険料が増えてはたまりません。
 月に一度の失業認定の際に、口をすべらせてしまう人は、不正受給者の1割くらいいます。
 就職したのにハローワークに届けずに失業給付を受け続ければ、就職先が雇用保険に加入するので、ほとんど発覚するでしょう。就職年月日を偽って申告しても同じようにバレるでしょうね。

福井労働局の例による不正受給発見の端緒件数
平成15年度 平成16年度 平成17年度
認定面接の際 6 6 0
センター通報 38 24 26
取得届との照合 1 1 0
自己就職者調査 5 3 1
本人の申し出 9 7 2
他安定所からの連絡 0 4 2
部外者通報 9 5 5
事業所調査 1 12 2
その他 6 5 3
75 67 41

福井労働局の例による不正受給の態様件数
平成15年度 平成16年度 平成17年度
就職未届 37 22 17
就労又は内職未届 16 12 8
就職年月日の虚偽申告 21 32 15
離職票等の偽造・変造 0 0 0
不正の離職証明書等 0 0 0
その他 1 1 1
75 67 41

ハローワーク新宿の例
 不正受給が発覚するケースとしていちばん多いのが、新たに被保険者資格の取得を出した場合というのがあります。そのほか、就業を安定所に隠していても、同僚の方から安定所に連絡があったとか、そういうケースもあります。

(02/06/05 第6回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録より)

不正受給の典型例

(以下は、千葉労働局のHPより抜粋)
・就職や就労(パート、アルバイト、日雇、試用及び研修期間なども含みます。)した場合に、そのことを失業認定申告書で申告しなかったり、または採用になった日付あるいは働いた日付を偽って申告する。
・内職や手伝いをした事実及び収入を隠したり、偽った申告をする。
・自営の準備や自営業を始めた場合に、その事実を隠したり、偽った申告をする。
・求職活動の状況を偽って申告する。
・労災保険の休業補償給付や健康保険の傷病手当金などの支給を受けていることを届け出ない。
・就職していないのに就職したと偽ったり、就職した日を偽って再就職手当等の支給申請をする。
・受給資格者証を他人に貸したり譲ったりすることなどにより失業の認定を他人に受けさせる。
・偽りの記載をした離職票を提出する。
・医師の証明書や採用証明書などの各種の証明書または再就職手当支給申請書など各種証明書の証明欄を偽造または改ざんして提出する。

(以下は、ハローワークのHPより抜粋)
・実際には行っていない求職活動を、「失業認定申告書」に実績として記すなど偽りの申告を行った場合
・就職や就労(パートタイマー、アルバイト、派遣就業、試用期間、研修期間、日雇などを含む。) したにもかかわらず、「失業認定申告書」にその事実を記さず、偽りの申告を行った場合
・自営や請負により事業を始めているにもかかわらず、「失業認定申告書」にその事実を記さず、 偽りの申告を行った場合
・内職や手伝いをした事実及びその収入を「失業認定申告書」に記さず、 偽りの申告を行った場合
・会社の役員に就任(名義だけの場合も含む。)しているにもかかわらず、「失業認定申告書」 に記さず、偽りの申告を行った場合
・定年後、「積極的に就職しようとする気持ち」や「いつでも就職できる能力(身体的・環境的)」 がなく、しばらく失業給付を受け、受給終了直後に年金を受給しようと考えている者が、 「失業認定申告書」により偽りの申告を行った場合

不正受給の処分

 不正な手段または偽りの申告により、「基本手当」やその他の給付を受け、または受けようとしたとき、次ぎに掲げる(1)〜(3)の処分が行われます。(現実に支給を受けたか否かを問いません。)

(1)支給停止
 不正な行為のあった日からは、失業給付を受ける権利がなくなります。一切の支給はされません。

(2)返還命令
 不正な行為により支給を受けた金額は、全額返還しなければなりません。

(3)納付命令
 さらに偽りその他不正な行為により支給を受けた金額と同額以下の金額の納付が命ぜられます。この場合には、(2)と合わせて、不正受給した金額の2倍以下の金額を納めなければなりません。

(4)財産差押
 さらに延滞金が課されます。なお、それらの支払いを怠った場合は、財産の差し押さえが行われる場合があります。

(5)刑罰
 不正の内容が悪質な場合は、詐欺罪として告発されることがあります。

連帯納付命令…・その不正行為が事業主の偽りの届け出、証明や不正受給をそそのかしたり、助けたしたことによる場合は、事業主にも連帯して返還命令・納付命令を発することになります