【コラム】Ichi,Ju,Hyaku,SENGOKU,SENGOKU/高島学

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Fight&Life vol.06

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PRIDE以前――、
UFC以前、UFC後、K-1以前、K-1後、そしてPRIDE消滅後らと同様に、
こういう言い方を日本の格闘技界は用いてもいいと自分は思っている。


そうPRIDE以前、
総合格闘技がビジネスと成立していなかった時代。
インターネットもスカパーもなかった頃、
UFCに触発され、地殻変動さながらうごめき始めた総合格闘技界には、
ちょっと一杯食わせ者のようなイベントが、時おり現れたものだった。

 


 

 



カーウソン・グレイシーの黒帯、ルタリーブリの強豪が大挙来日した
ユニバーサル・バーリトゥード(UVF)。


プロレスラーがVTにチャレンジした(イメージが強い)U-JAPAN。


U-JAPANは、海外に行っていたため、取材していないが、
パンフを作った関係で、ここの主催者がどんな人間性を持っていたのか、
身をもって知っている。


UVFは某ビデオ会社が、まだ未知の世界だったブラジル格闘技界に、単身乗り込み、
日本をさながらジパングのように売り込んで、実現に到った大会だった。
日本とブラジルで交互に大会を行った。
日本で2度、ブラジルで1度取材した。
ブラジルでは、UVFのプロモーション関係の人物が、
現地でのコーディネイトをしてくれたのだが、
親切さの裏に感じる胡散臭さを頭の中から消し去ることは、とてもじゃないが無理だった。


胡散臭さといい加減さ入り混じり、リングでは血と汗が流される。
UVFもU-JAPANも豪華な大会だった。
煽り映像も、煌びやかなステージがなくても、
リング上が華やかだった。
ファンも関係者も、リング上以外のことを議論の対象にすることが、
ほとんどなかった時代。
チケット料金に含まれているのは、試合を楽しむことへの対価のみだった。


そんな頃のイベントに、戦極は似ていたと思う。
早々に否定しておくが、何も戦極がいかがわしいといっているのではない。


PRIDEの成功以降、日本ではあまり感じられなくなった、あの雰囲気。
いや、桜庭ブレイク以前のPRIDEもあんな感じだった。
あのころの「総合イベント」のハチャメチャな楽しさは、
PRIDE以降の格闘技ファンには理解してもらえないかもしれない。


ただ、PRIDE以降だろうが、格闘技を好きになってくれて、
今もDREAMやPRIDEの会場を訪れる人たちこそ、
そういうシンプルな会場設営、
リング上を全面に強調した雰囲気を、意外と斬新と受け取ってくれるかもしれない。


少なくとも、PRIDEの流れをくみ、
意識しないという意識が働いたかのような煽り映像。
強烈な爆音、ディスコ・ミュージック、そして――
ラウンド終了10秒前の「シャキーン」という異音より、
シンプルな会場の方が、受けが良いのではないかと感じた次第だ。
(あのシェキーンという音、関節技が極まりそうになると、キャッチ・コールの変わりに、あの音が場内に響き渡るのかと、馬鹿げた想像までしてしまった)


戦極には、まだ色がない。


吉田、五味、ジョシュ・バーネット、PRIDEで名前を売った選手がエースのイベント。
そこにホジャー・グレイシー、北岡悟という、専門誌を購入しているファンなら食指が動くファイターの登用。
マイク・パイル、ジョルジ・サンチャゴなんて、正直、専門誌の記者でも試合を見たことがないケースが、ほとんどという強豪の招聘。


自分は格闘技界の住人だから、そんな実力者を招聘している心意気を買いたい。
そして、ありがたく思っている。


ただし、観客席を多くは、どのように彼らの試合を見ているのか。


1、10、100、センゴク、センゴク――というパフォーマンスを
楽しめたファンと、楽しめなかった人たち、どちらが多いのか。



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パイルの煽り映像では、ランディ・クートゥーを引き合いに出し、
光岡の場合は、UFCファイターとして岡見勇信が出てきた。
けど、どれだけの観客が、岡見の本当の価値を知っているのか。


まだ始まったばかり。
試行錯誤の段階だから、マッチメイクも大会進行も、それこそ試行錯誤しているのは、
会場とプレスルーム、インタビュールームを行き来していて十分に感じられる。


マイク・パイルに敗れた無名のファイターが、
インタビュールームにやってきても、ほとんどの記者は質問なんてない。
なんとも気まずい空気が、流れる。


一生懸命さの裏返しだ、必至さの空回りだと感じた。


ホジャーの会見では、ポルトガル語の通訳さんが陣取っていた。
が、日本語とポルトガル語のやりとりに、米国、韓国のマスコミが抗議をした。
米国のメディアが、英語を使うと、ホジャ―は英語で答える。
そして、通訳はポルトガル語から英語の方に変わった。


その英語の通訳の女性は、ホジャ―の会見後、
米国のメディアに序盤の日本語とポルトガル後のやりとりを、今一度、英語で説明すると申し出ていた。


ほほ笑ましかった。


システマティックじゃない、手作り感。


こういうやりとり、この温かさがファンに伝わるような、会場設定ができれば――。


戦極には、まだ実体がない。


ここがDREAMとの違い。
DREAMには、既存路線(HERO‘S)と異分野(PRIDE)の融合というレールが見える。
戦極は違う。


だからこそ、どんな装いが似合うのかは、本人のこだわりよりも、
周囲の意見に耳を傾けるべきだと思う。
(会場アンケート、インターネット、いかなる手段をこうじても、
徹底してファンの意見に耳を傾けてほしい)


次回大会に五味が出場するかもしれないと――という含みを持たせた方が、
チケットセールスに良いのだと思うが、
第4回大会の出場を大いに謳い、
吉田、五味、三崎のそろい踏みがないことを早々に告白した。


商売としては、正しくないかもしれないが、
事業としては、間違っていないと思う。
逆にこういう姿勢こそ、格闘技イベントに浸透してほしい。


そうすれば、PIRDEもDREAMも関係ない、
戦極が生まれ、総合格闘技界にPRIDE以降が到来する(かもしれない)。

 

 

 

 

【 2008年05月20日 15:45 】

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