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「自殺願望」、若い世代や不安定雇用層に顕著

内閣府が、初の自殺意識調査

渋井 哲也(2008-05-20 14:10)
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内閣府が5月16日に発表した「自殺対策に関する意識調査」(撮影:渋井哲也)
 内閣府は「自殺対策に関する意識調査」を発表した。類似の調査では、「こころの健康(自殺対策)に関する世論調査」があるが、回答者の自身の経験や見方を細かく聞いた調査は今回が初めて。

 若い世代や不安定な雇用に置かれた人に、「自殺願望」を持った人が多いことがわかった。また、自殺サイトを「規制すべき」との声も多いが、実際にアクセスしている人は約2%だったことも明らかになった。

 調査(5月16日発表)は全国の20歳以上の男女3000人が対象。調査時期は2008年2月21日から3月9日まで。回収率は60.3%。調査方法は、調査員による留置法(封筒による密封回収)。

周囲に自殺した人がいるのは3人に1人

 「周りに自殺した人がいる」と回答したのは34.7%で、3人に1人は自殺で亡くした家族や友人らがいることがわかった。

 内訳は、「同居の親族(家族)以外の親族」11.1%、「友人」9.1%、「職場関係者」8.5%、「同居の親族(家族)」1.4%、「恋人」0.2%などとなっている。

 また、有職者のうち、「うつで仕事を休業することに」に「支障がない」と回答したのは9.9%で、うつで休職することに積極的ではないことも浮き彫りになった。

 その理由で最も多いのは「上司や同僚に迷惑をかける」が51.7%。「職場復帰ができなくなる」が26.6%、「昇進や昇給に影響する」18.3%、「仕事が他の人に引き継げない」17.6%などとなっている(複数回答)。

 「自殺を考えた経験」については、「したいと思ったことがある」が19.1%。「したいと思ったことがない」は70.6%で、5人に1人が自殺を考えた経験があることがわかった。

 その「思ったことがある」について、年代別にみると、トップは30代の27.8%で、ついで20代は24.6%。これらの年代層では4人に1人が考えたことになる。40代は19.1%、50代は19.5%、60代は12.9%、70代は12.6%。中でも、30代の女性は34.7%で、3人に1人が考えたことがある、という結果だ。

 職業別に見てみると、「その他」と「無回答」を除くと、「パート・アルバイト」が25.8%で最も多く、順に「自営業」25.8%、「自由業」22.1%、「学生」21.9%、「常勤」17.6%、「専業主婦・主夫」17.3%、「無職」16.3%だった。

悩みを打ち明けるのは「恥ずかしい」?

 悩みやストレスを感じたときに、相談したり、助けを求めるのは恥ずかしいと思うか、との質問については、「そう思わない」が67.4%、「どちらかという とそう思わない」11.9%で、約8割が「思わない」と考えている。

 ただ、「自殺したいと思った」人に限ると、「そう思わない」が61.3%、「どちらか というと」は11.8%で、7割に下がった。特に「1年以内に思った」人は、「そう思わない」が44.4%、「どちらかというと」は13.9%で、6割弱 に減っている。

 自殺を考えた人の中で、自殺を考えたときに相談したことは「ない」としたのが60.4%。相談したのは32.7%で、「友人」は17.6%、「同居の親族(家族)」は13.9%、「同居の親族(家族)以外の親族」4.9%、「医師」4.9%などとなっている。

 「自殺サイトを法的に規制すべきか」については、「すべき」50.6%、「どちらかというと規制すべきである」25.5%を合わせると、76.1%が「規制すべき」と答えている。性別で見ると、女性が男性よりも「規制すべき」と回答(「すべき」と「どちらかといえば」を合わせると、男性75%、女性72.2%)。年代別で最も多いのは50代が84.5%、40代が83.9%が続く。

 その一方で、その「自殺サイト」にアクセスしたことがあるのは、1.9%でしかない。最も多い20代でも6.6%、30代でも1.9%だった。性別を加味すると、20代男性が9.5%、30代男性2.8%、20代女性2.6%、50代男性2.3%、70歳以上の女性2.2%の順になっている。

 自死遺族で、「いのちの授業」や講演活動もしている大学生の尾角光美さん(24)は、

 「ある高校で調査した時に、『自殺を考えたことがある』は46.9%、『周囲から、死にたい、と言われたことがある」は41.7%だった。中学生の3割が『死にたい』と思ったことがあるとの調査もあり、実際に、死にたいと思ったことがある人はもっと多いのではないでしょうか」

 「どうすれば相談できるようになるのかを考えてほしい。単に、相談窓口を増やせばいいというのではない。相談できるかどうかは個人の内面の問題があると思う。小さいときから、他人に力を借りるとか、相談できるという経験も必要。なにげに話を聞いてくれる人がほしい」

と話している。


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