和歌山県すさみ町周参見の町立すさみ病院が、本年度から訪問診療に本腰を入れる。外来通院が困難な患者の自宅を、医師が定期的に訪問して診察する。既に3人の患者の訪問を始めている。来年度には24時間体制の訪問看護ステーションを設立する予定。高垣有作院長(49)は「過疎と高齢化が深刻な地域にある病院なので、良質な医療と介護が継続して実施できるよう、改革を進めて機能を充実させたい」と話している。 訪問診療は開業医や診療所で実施されているが、公立病院での例は全国的にもまだ少ないという。県医務課地域医療班は「実情を把握していないので、県内公立病院での訪問診療の有無は分からない」としているが、橋本明彦町長は「県内でも先駆的な取り組みだと思う」と話している。 同町は2007年の人口が5070人。40年前に比べ半減した。05年の人口構成比率は15歳未満が10%、65歳以上が39%。町内に39ある集落のうち、65歳以上の人が半数以上を占める限界集落は16に達している。 今後、同病院は利用者総数が減る半面、高齢の患者が増加することが想定されている。また、通院が困難な患者は受診が遅れ、結果として重症化するケースが目立ち、地域の特性に合わせた取り組みが求められていた。 訪問診療は、患者の状態の維持・向上を目的に定期的に訪問する取り組み。 4月から始め、予約を受けて毎週月・木・金曜の各午後に実施している。 訪問診療開始に伴い、携帯用のレントゲン撮影装置と超音波エコー、心電図を購入した。 訪問看護ステーションは訪問診療の取り組みを補完し、在宅医療を支えるのが目的。さらに町内や近隣の開業医などの医療機関、介護施設との連携も強めていく。 町の健康教室とは別に、ある程度の医療知識を住民に広める講習会も、各地の集会所単位で夜に開く予定だ。健康意識を高め、病気にならないようにする予防医療を充実させるためで「自分の健康は自分で守るという意識を持ってほしい」と高垣院長は期待する。 同病院は1952年に設立された。内科と外科があり、一般病棟48床、療養病棟28床。医師4人、看護師30人。ほかに県立医大の研修医が1人、毎月交代で来ている。 06年度の入院患者数は1万6706人、外来患者数は2万2821人。入院、外来患者数がともに増加傾向にあり、今後、医師や看護職員の「やりくり」が課題となりそうだ。 高垣院長は「関係機関の協力を得て連携を強め、医療・介護・福祉の一元化を進めることで効率化が図れれば、課題はある程度クリアできる」とみている。