熊本市の慈恵病院が設置し、親が育てられない新生児を預かる「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)について、2007年度(昨年5月‐今年3月)に預けられた子どもの数が計17人だったことが20日、同市のまとめで分かった。これまでは16人が預けられたことまでが判明していた。熊本市は午後から開く市要保護児童地域対策協議会で正式に報告する。「ゆりかご」の運用状況が公表されるのは初めて。
協議会では17人の年齢や性別、預けられた当時の健康状態など16項目について報告される見通し。同市はこれまで、預けられた子どものプライバシー保護を理由に「ゆりかご」の利用の有無については明らかにせず、運用開始から1年後に予定していた情報公開も当初は件数のみにとどめるとしていた。
熊本市が従来の方針を事実上撤回し、公表項目を拡大したことで、「ゆりかご」の是非や、児童福祉行政での位置付けをめぐる本格的な論議が始まることになりそうだ。
「ゆりかご」は慈恵病院の蓮田太二副院長らがドイツの例などを参考に計画。熊本市が医療法に基づく施設変更を許可し、昨年5月10日に運用を開始した。
子どもの預け入れについて、病院側は「年1件あるかないか」(蓮田副院長)と予想していたが、初日に3歳の男児が預けられ、その後も、多い時期は月数件の利用が相次いだ。一方で、思い直した保護者が手紙などで病院側や県児童相談所に連絡を取り、子どもを引き取ったケースもあった。
熊本市は「保護責任者遺棄罪に当たるなどの違法な預け入れはなかった」としている。
=2008/05/20付 西日本新聞夕刊=