恵那市上矢作に向け、曲がりくねった道を車で走っていた。旧上矢作町は04年、恵那市と合併し、人口は2500人を切っている。そこで、へき地医療を続け、褒章を受けた医師に会うためだった。ひたすら続く森と川。その風景に、2年前に行ったセルビア共和国を思い出した。
モンテネグロからセルビアの都市部に向かうバスから見えた景色は、同様に森と川ばかりだった。「人はどこにいるのだろう」。しばらくすると、曲がりくねった道で、洗濯板とバケツ、洗いたての衣類を抱えた少女と老人に出会った。
洗濯板は、20代前半の私には、過去のものでしかなかった。しかし、セルビアで、洗濯板がある“いま”に出会うことができた。
4月に岐阜支局へ赴任した新人です。知らない場所へ行きたい。いろんな人に出会いたい。もっとこの世の中を知りたい。そんな気持ちで記者になりました。【石山絵歩】
毎日新聞 2008年5月20日 地方版