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地上デジタル放送は本当に視聴者に浸透しているのか

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 2008年5月8日に総務省が,「地上デジタルテレビ放送に関する浸透度調査」(ビデオリサーチが業務を受託)の結果を公表した。今回はその結果を基に改めて,地上デジタル放送普及の現状を分析してみた。なお以下に述べる分析結果は,総務省の調査結果と必ずしも一致するものではなく,筆者の独自調査の視点が入っていることを,あらかじめお断りしておく。


 今回の総務省の調査は2008年2月27日から,全国47都道府県の全域に居住する15歳以上80歳未満の男女に調査票を送付して行われた。その結果,7360件の有効回答が得られた(総務省の発表資料)。サンプル数としては,実態を把握するのに十分であろう。その結果を見て気付いたことは,地上アナログ放送が終了することを92%以上の人が知っているが,地上デジタル放送を視聴している人が30%程度しかいないという事実である。まだまだ関係者の努力が足りないのではないかと感じる。


視聴可能世帯と実際の視聴世帯に差

ジュピターテレコム(JCOM)のデジタル放送サービスに対応した集合住宅などでは加入者でなくても,一般の地上デジタル放送受信機でスキャン機能を用いれば,デジタル化されたコミュニティー番組を視聴できる
写真1●ジュピターテレコム(JCOM)のデジタル放送サービスに対応した集合住宅などでは加入者でなくても,一般の地上デジタル放送受信機でスキャン機能を用いれば,デジタル化されたコミュニティー番組を視聴できる
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 調査結果の詳細をみると,受信者のうちケーブルテレビ(CATV)経由と直接受信(DTH)がほぼ40%ずつである。日本の総世帯を4400万件とすれば,地上デジタル放送の受信世帯は1320万件で,そのうち500万〜550万件がデジタルCATVシステム経由と考えられる。

 これを受信機のタイプ別の回答から考えると,STB(セットトップボックス)を所有している世帯は約10%である。そうすると,STBの普及世帯は約440万件となる。デジタルCATV経由の視聴世帯とSTBの普及世帯の差である約100万件は,デジタルCATVシステムを導入している集合住宅などでパススルー方式によるキャリア(搬送波)を薄型テレビなどに導入し,CATV事業者と契約せずに視聴しているのではないかと考えられる(写真1)。

 CATVによる地上デジタル放送の配信環境をみるとパススルー方式のほかに,トランスモジュレーション方式だけに対応するシステムも存在する。また、都市型難視聴エリアをCATVシステムで解消させたケースも少なくない。そのため,「どのような場合にCATV事業者との契約が必要なのか」,「どのような接続工事や設置の仕方があるのか」といった,より詳細な情報の提供努力が求められていることは間違いない。


受信機があるのに視聴しない人を減らす対策などが急務

東京都内では中野区や杉並区,練馬区,世田谷区などで,埼玉県や神奈川県などの独立UHF局のチャンネルを視聴しているため,UHFアンテナの向きを調整しなければ,民放キー局の地上デジタル放送を快適に受信できない世帯が少なくない
写真2●東京都内では中野区や杉並区,練馬区,世田谷区などで,埼玉県や神奈川県などの独立UHF局のチャンネルを視聴しているため,UHFアンテナの向きを調整しなければ,民放キー局の地上デジタル放送を快適に受信できない世帯が少なくない
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 2008年春に,鹿児島県内で最大の出力となる奄美大島の中継局が,試験放送波の送出を開始した。北海道の視聴エリアも拡大しており,全国のほとんどの地域で地上デジタル放送が受信可能になっている。しかし総務省の調査結果を見ると,「まだ開始されていないから地上デジタル放送を視聴していない」という回答が24%もある。また,「アンテナや分配器が対応していないから」とする回答も19%近い数字である。さらに,受信機を持っているのに地上デジタル放送を視聴していない世帯が10%存在するという。

 そして,筆者を含めて関係者の努力不足を痛感させられるのが,「アナログ放送の方が便利」という回答が23%近くあり、「何をしてよいのかわからない」という回答が13%ほど存在することである。今回の設問にこそなかったが、「受信のためのアンテナ調整費用の負担額によっては、アナログ放送が終了するまでデジタル放送を受信するアクションをとらない世帯が相当数に上るのではないか」という危機感を持った。関係者にとっては,エンドユーザーに説明できるだけの受信に関する知識が必要で,まず実地研修の充実が欠かせないのではなかろうか(写真2)。

 最後にDTHにおける厄介な例を紹介したい。首都圏で最大の「アナログ-アナログ変換」の難所といわれた東京・多摩地区において2007年に,デジタル放送の中継局が廃止されたのはご存知かと思う。その多摩地区で数年前に行われたアナ-アナ変換作業時に設置されたUHFアンテナを,新しく購入したシャープの「AQUOS」に接続したところ,「ブロックノイズが出るチャンネルがある」と,最近マスコミ関係者から相談があった。電話やメールでやりとりを行い,結局,彼は自宅の2階に14素子のUHFアンテナを設置し直した。

 数年待てば新東京タワーからの送信によって解決できるかもしれないが,電波の伝播は机上の計算外のものが多い。寝室や台所といった2台目のテレビへの配線が複雑であるため,リビングだけにデジタルテレビを設置したという知人も少なくない。今後,こうした受信実務の相談にのれる組織の立ち上げや人材の確保が急務だと感じる。


佐藤 和俊(さとう かずとし)
茨城大学人文学部卒。シンクタンクや衛星放送会社,大手玩具メーカーを経て,放送アナリストとして独立。現在,投資銀行のアドバイザーや放送・通信事業者のコンサルティングを手がける。各種機材の使用体験レポートや評論執筆も多い。


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(佐藤和俊=放送アナリスト)  [2008/05/19]





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