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一刀両断 −小林 節− 問責決議の正しい使い方
2008/05/20の紙面より
小林 節衆議院で内閣不信任決議が可決された場合、憲法上、内閣は、衆議院を解散するか自ら総辞職するか決めなければならない(六九条)。他方、参議院による内閣不信任は「問責」決議と呼ばれるが、これには憲法上の根拠がない。従って、問責決議には法的効果がなく、それを受けた内閣はそれを無視することもできる。他方、憲法上、閣僚はいつでも議院に出席する「権利」と義務がある(六三条)。 だから、民主党等の野党が参議院で福田内閣に対する問責決議を可決したとしても、衆議院を制している自民・公明与党と内閣はそれを無視する…と今から公言している。 そのため、参議院では「福田内閣を認めない」と決議した場合、それでも参議院の審議に出席して来るであろう福田首相等に対して、野党は審議を拒否せざるを得なくなると言われている。 そして、(共産党を除く)野党がサボータジュをしている状況下で、国会の審議と議決はかえって順調に進むことになる。 その結果、有権者の眼には審議拒否を続ける野党の姿が無責任に映り、野党が支持率を下げかねないとも言われている。 このことを恐れて、今、野党は参議院に福田内閣問責決議案を提出しかねている。 しかし私は、それは「考え過ぎ」だと思う。 つまり、参議院による内閣不信任の「問責」決議に法的効果がないことはもとより自明のことなのだから、その点を悩んでも始まらず、それを承知の上で、参議院多数派は、例えば後期高齢者医療制度、ガソリン税再値上げ等、自分たちが真に「悪政」だと思うものがあれば、内閣に対する有権者の強い怒りを代弁して問責決議を突き付ければよい。 その上で、その問責には(法的効力がなく)政治的批判としての効果しかない以上、審議を続行し、緻密(ちみつ)な政策批判を展開してそれを有権者にみせればよい。 民意の裏付けのある問責決議である以上、その(法的効果は無であっても)政治的効果が無であるはずがない。そこで一番重要なことは問責の理由である。 正当な理由による問責決議であれば、その法的効果として総選挙を行わせえなくても、その政治的効果として、次回の総選挙で野党に勝利をもたらすことができるはずであろう。 (慶大教授・弁護士)
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