今年のインド株は1〜3月については、他の新興国市場ないしはアジア・パシフィック市場よりもパフォーマンスは悪い結果となった。4月には新興国25市場の中で6番目の好成績であったが、結局、1〜4月を通してみると、23番目のパフォーマンスにとどまった。
この間、海外投資家はインド株(デリバティブを含む)を65億ドル(約6500億円)買い越している。これは昨年同期と比べて12%の増加だ。また、国内勢は機関投資家が16億ドルを買い越した。従って今年は個人が売りに廻っていることになる。
インド市場で現在、懸念されている要因は、インフレだ。インフレ率は45カ月ぶりの高水準となっており、企業業績にも影響が出始めている。インドでは卸売物価(WPI)がインフレ指標として定着しているが、昨年10月あたりから上昇が加速、4月の第4週には前年比7.61%の値上がり率に達した。
これは2004年7月第3週以来の高さだ。そこで、中央銀行であるRBI(インド準備銀行)は、4月29日に預金準備率を0.25%引き上げて8.25%とするインフレ対策を発表した。引き上げは5月24日から実施される予定で、約23億ドル(約2300億円)の資金が市中銀行から吸い上げられることになる。
中央銀行は楽観的だが…
与野党伯仲の議会を抱えるインドでは、政府は来年5月に予定されている国政選挙を常に意識している。今年2月に決定された次年度(2009年3月期)予算でもそうだ。インフレや貿易など経済環境が厳しくなっているのに、予算ではそれらがほとんど考慮されず、むしろ政治的に配慮されて刺激的な予算編成となった。
インドは今、輸出の伸びよりも輸入拡大ペースが早く、貿易収支が悪化している。2008年3月期の貿易収支は約800億ドル(約8兆円)の赤字となり、2006年度の590億ドルを36%も上回った。
この間、通貨ルピーの対ドルレートが7.7%上昇したことが影響、輸出の伸び率は23%にとどまり、輸入の27%増に及ばなかったのだ。インドの輸出競争力が弱まることは問題である。製造業はGDP(国内総生産)の20%を占めるが、財の輸出の80%がそうした工業製品である。
インド準備銀行のリポートでは、2007年度は原油の国際価格がルピー換算で61%値上がりした。しかし、卸売物価の項目では石油製品等は平均9%程度の上昇にとどまった。2008年度についてドイツ銀行では、過去5年間の分析結果からして、政府が国内の石油製品価格を抑えても、インフレ率は7〜8%となることが避け難いとしている。