米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は、ブラジルのソブリン格付けを1段階引き上げ、投資適格級のBBBマイナスとした。主要格付け会社が、ブラジルに投資適格級の格付けを与えたのは初めてだ。地元では「投資家もアナリストも、そして政治家もBBB獲得は2009年以降と見ていた」(コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー)だけに、この格上げのニュースにブラジルの金融関係者などは驚きと戸惑いに包まれた。
ともあれ、これを受けて、この日のブラジル株式市場は買いが殺到、ボベスパ指数は6.3%高の6万7868ポイントと急伸、一気に史上最高値となった。また、通貨レアルも2.5%近く上昇した。株式市場の熱気はその後も続き、5月15日現在で7万1492ポイントに達している。
世界の金融市場を揺さぶるサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題や米国の景気後退などどこ吹く風のようでもあるが、世界の89の株式市場で昨年の高値を抜いて過去最高となったのはブラジルが一番乗りだ。これに引っ張られるように5月14日に、ロシア(RTS指数)が、翌15日にカナダ(トロント総合指数)が昨年の高値を抜いて最高値を付けた。
S&Pは異例の措置か
S&Pは世界118の政府が発行するソブリン債を格付けしている中で、これまで投資不適格から投資適格に引き上げたのは今回のブラジルで14カ国目である。同社の発表資料によると、「ブラジルの安定した金融システムと政策が格上げにふさわしいためで、財政赤字、対外債務が削減中である」(同社クレジットアナリストのリサ・シネラー氏)。
もっとも、「他のBBBクラスの国と比べて国が抱える債務はまだ大きいが、財政政策や債務管理がうまく運んでおり、将来展望が明らかである」と付言している。
実際、昨年末時点での政府債務はGDP(国内総生産)の47%に達しており、BBB国平均レベルの20%強からはかけ離れて借金が多い。ソブリン債とは政府や政府機関が発行する債券だから、その債務が多いことは格付けには大きなマイナスのはずだ。