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【社説】

クラスター爆弾 『全面禁止』決断の時だ

2008年5月20日

 多数の市民を無差別に殺傷するクラスター(集束)爆弾について「オスロ・プロセス」ダブリン会議が始まった。全面禁止条約の合意を期待する。日本政府は完全廃棄を決断すべきときだ。

 今回の会議は、アイルランドの首都で三十日まで続けられる。クラスター爆弾を「全面禁止」とするか、一部を認める「部分禁止」にするかが焦点だ。

 クラスター爆弾の規制については、二〇〇一年から、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)締約国会議で協議されてきた。しかし、主要な保有国の米国や中国、ロシアは使用禁止に追い込まれるのを避けるよう図ったため、協議は停滞し、結論は出なかった。

 これに飽き足らないノルウェーなどが、〇八年の禁止条約締結をめざす「オスロ・プロセス」協議を昨年二月から進めてきたが、米中ロは参加していない。多くの欧州諸国などは「全面禁止」を支持しているのに対し、英独仏は「部分禁止」の立場だ。

 クラスター爆弾は、親爆弾の中に多数の子爆弾を抱え、投下された途中で親爆弾から子爆弾が広い範囲にわたって散らばり、地上部隊などに損害を与えるものだ。

 イラクやアフガニスタン、旧ユーゴ(セルビア)、レバノンなどの紛争で使用された。戦闘が終わっても不発弾が残り、民間人の被害報告が後をたたない。

 不発弾処理中に両手足を失う被害に遭ったセルビア元兵士、ブラニスラン・カペタノビッチさんは「この爆弾一発でサッカー場二、三面分の地域を破壊し、犠牲者の95%以上が市民である。モンスター(怪物)兵器だ」と、非人道兵器の廃絶を訴え続けてきた。

 対人地雷禁止条約を想起してほしい。この条約は地雷の使用、開発、生産、貯蔵、保有、移転などを禁止しており、米国なども事実上、使用できなくなっている。クラスター爆弾も同じように「全面禁止」は可能だ。ダブリン会議で英知を結集してほしい。

 日本政府は、安全保障上、必要であるというのが基本姿勢であり英独仏に同調している。何よりも禁止条約の成立を嫌う同盟国米国への配慮が目立つ。

 日本国民と政府は長く「核兵器廃絶」を訴え、完全廃棄をめざす努力を今も続けている。ならば、クラスター爆弾についても完全廃棄への努力は変わらないはずだ。

 福田康夫首相は毅然(きぜん)とした姿勢を国際社会に示してもらいたい。

 

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