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【主張】四川大地震 二次災害の拡大阻止急げ
発生から1週間が経過した中国・四川大地震の被災地では、がれきの下から生存者を探す作業と同時に、すでに一部で発生している二次災害の拡大阻止が急務だ。
死者はすでに3万人を大きく上回った。これ以上増やさない対応を求められる中国政府は正念場を迎えている。
四川省当局によれば、地震に伴う土砂流で河川がせき止められた「土砂崩れダム」が21カ所も出現したという。今後、大雨で急激に水量が増せば、決壊して下流の集落を襲う恐れも出ている。
まだ人的被害はないようだが、震源に近い同省北川県では一時パニックが起きたとの報道も伝わっている。十分な監視によって、早めに住民を避難させるなどの対応が求められよう。
被災地にはつきものの伝染病の阻止は容易ではない。被災地では通常は飲まない川の水を飲んだり、ごみや糞尿(ふんにょう)が適切に処理されないこと、さらに病原菌を媒介する蚊の大量発生などから伝染病が発生しやすくなる。
今回の被災者では、これまでに30人が傷口から細菌が入ったとみられるガス壊疽(えそ)に感染していたことが判明した。早期治療を怠った場合の致死率が高い感染症であり、被災地での接触感染の注意が必要だ。
余震が続く中での二次災害や伝染病の阻止には、科学技術と緊急医療の人材が欠かせない。
「土砂崩れダム」の全容把握には、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測衛星「だいち」が、震源地の北東約100キロの北川県付近を撮影した映像が威力を発揮した。他の「土砂崩れダム」の映像も役に立つことを期待したい。
日本政府は中国側の要請に基づき、現在派遣中の国際緊急援助隊に加え、新たに20人の医療チームを派遣すると発表した。これも時宜を得た対応といえる。
中国政府のこうした支援受け入れは、従来はなかった。北京五輪を控えて「国際協調」の姿勢を強調する政治意図があるとしても、歓迎できる変化である。24万人を超す負傷者の手当てや伝染病の予防にあたるには、被災地での経験を積んだ専門医が一人でも多いほうがいい。
人命救助から復旧、そして復興まで、四川大地震の長い試練が続く。中国のさらなる発想の転換を注視していきたい。