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社説:四川大地震 ミャンマーの救援も急げ

 中国の四川大地震が発生してから1週間。日本の国際緊急援助隊は生存者捜索の任務をほぼ終えた。新たな生存者が見つからなかったとはいえ、危険をおかして人命救助に当たる隊員たちの姿は奇跡を祈る被災者家族に深い感動を残した。国際連帯を中国世論に印象付けた意義は大きい。

 今回のマグニチュード(M)8という巨大地震の被害は、北海道に匹敵する広大な範囲に及んだ。都市部では、阪神大震災のようなビル崩壊が起きた。同時に海抜2000~3000メートルの震源地では、中越地震のような土石流が起きた。

 十数万人の軍隊が動員されたが、震源地、岷江(びんこう)の大渓谷に飛んだ落下傘部隊やヘリは悪気流と厚い雲に阻まれた。歩兵部隊は余震による岩石の崩落を避けながら野宿をかさねて現場に着いた。いまも救援隊がこない山奥から生存者が町場に助けを求めに下りてきているという。

 インフラの被害も大きい。四川盆地に入る鉄道のトンネルが崩れ、航空燃料を積んだ貨物列車が炎上した。鉄道輸送が止まっている。ダムの損壊で発電にも影響がある。化学工場や核施設が環境に被害を及ぼさないかも不安だ。

 地震発生直後から温家宝首相が被災地に入り、陣頭指揮に当たった。胡錦濤国家主席も現場で督励した。しかし初動が早かったとはいえない。

 どのような被害がどこで起きているか、地方政府が迅速に中央政府に報告する仕組みが十分ではなかった。災害担当の副首相が海外出張中で判断が遅れたともいわれている。

 それにしても、各国からの国際緊急援助隊派遣の申し出を断っていたことは悔やまれる。72時間が救命のカギということが不徹底だったのだろう。先進機材や救助犬をつれた外国チームの入国を許可したときには72時間を過ぎていた。

 日中韓の間での地震のデータ交換でも、中国はデータ公開に後ろ向きだという。まだ防災と軍事の違いが理解されていない。だが中国のメディアも今回、「72時間」の意味を理解した。地震予知の国際協力にも前向きになるだろう。

 人命救助を最優先する段階から、難民対策など次の課題に移らなくてはならない。インフラの修復という長い道のりも控えている。

 大災害は中国だけではない。ミャンマーは水害によって死者・行方不明者12万人の大惨事だ。ただちに食糧、水、薬品を送り、防疫対策に着手しなくてはならない。

 軍事政権は国民の批判を恐れてか、外国からの支援申し出をほとんど拒否している。

 こんどは中国の出番だ。国際救援の重要性を軍事政権に説得すべきだ。中国は国連安保理常任理事国である。ミャンマー救援の先頭にも立つ責任がある。

毎日新聞 2008年5月20日 東京朝刊

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