2008年5月18日

試合終了後、ワシントンＤＣへ移動。
アメリカに来て初めて、地下鉄ではない電車に乗りました。
しかもチャーターです。貸切なのです。
フィラデルフィアからＤＣへは、南へちょっと下るだけ。だから、
ワシントンへの移動は飛行機ではなく電車を利用するのが通例で、
「楽しいぞー！」とさんざん聞かされていたのです。実は鉄っちゃんの
僕としては、待ちに待った遠征でした。

４両編成のフィリーズ列車には、
客車以外に、バーカウンター車、リビングルーム車があります。
リビングの長テーブルの上にはさまざまな食事が用意されており、
それを食べながらトランプをすることもできます。用意されていたピザは
皿のようにカッチカチです。でも、風情があるから許せるのです。

車両と車両の間は、「PUSH TO OPEN」と書かれたドアで仕切られています。
胸もと足下にボタンがあって、足や手でそれを押すとドアが開く仕組み。
すでに開いていたドアを通り抜けようとしたところ、自動で感知、はしてくれず、
みよ〜ん、という音がして、はさまれかけてしまいました。
「ソウがはさまるっ！」とほかの選手たちが助けに来てくれたのも、電車ならではの一興。

フィラデルフィアを出発したあとは、ボルチモアに５秒ほど停車しただけで、
ほとんどノンストップの１時間弱。普段は遠征の移動など、単なる睡眠時間の
補填としか考えていないだけに、久しぶりに「旅をしている」という喜びを堪能しました。

残念ながら夜のため、窓の外の景色は見えませんが、どこを切っても自分たちの列車です。
関係者だけしか乗っていない、という気軽さから、あちこち触ったり、
歩き回ったり。電車に乗るたび靴を脱いで後ろ向きに座って、
窓にぺったり顔をつけていた、子供の頃の僕がよみがえります。

「こら！ちょろちょろしないでじっと座ってなさい！」と普段寛に言ってはみても、
子供にとっては毎日が探検のようなもの。
目新しさから歩き回ったり、触ってみたりしたくなるのも、仕方ないんやなあ、と、
遠征の移動で子供の心理を学んだ私です。

今度日本に帰ったら、寛を連れて電車の旅にでも出かけてみますか。

ワシントンD.C.にて　田口壮　

2008年5月17日

ここまでヒットが出ないと、悲しいとか悔しいとか腹立たしいという感情より、
もう笑いがこみ上げてきます。フィリーズのファンも同じ気持ちなのでしょうか、
打席に入るときは、ものすごく大きな拍手で迎えてくれます。
そして、空振りすると、激しいブーイングでののしられます。
わかりやすいです。

しかし今日、何かつかんだのでもう大丈夫。
次の打席でヒットが出ます。
次、がいつになるかはわからないので、それまで「今日つかんだこと」を
覚えていられたら、の話です。

ぜんぜんヒットが出ないので、
今年のカレンダーには５月がなかったことに決定。

ペンシルベニア州フィラデルフィアにて　田口壮　

2008年5月16日

大興奮の今日の試合、その立役者はジェイソン（ワース・外野手）でした。
３打席連続でホームランを打ったのです。霧雨の中がんばって観戦してくださったファンには
最高のプレゼントになったでしょうし、僕らもワクワクドキドキと見守りました。

１打席目に、３ランホームラン。これは、「ナイスホームラン！」で終わり。
僕は室内ケージで打っており、テレビでそれを見ていました。
２打席目は満塁ホームラン。球場は完全にヒートアップです。
僕はその頃まだ室内にいて、やはりテレビで見ていました。
３打席目。今度はソロホームランです。
こうなるともう室内になんかいられません。この祭りに乗り遅れたらアカン！と、
転びそうになりながらあわててベンチに走って戻り、ハイタッチに参加してきました。

この時点で、ジェイソン以外の誰もが、頬を紅潮させて、
「４打席目どうなるんや」「いくかな」「狙うよ」と大騒ぎです。
当の本人だけが、淡々としています。その淡々ぶりがかえって、彼の緊張を
感じさせました。

さあ、第４打席。
チャーリー(監督)とジミー（ウイリアムス・ヘッドコーチ）は、
「緊張してるんだろうなー」「してるさー！」
「こんなことまずないもんなー」「ないよなー！」と、
打席を見つめながら戦略を練るでもなく、
単なる野球好きのおじさんになっています。

僕らもたぶん、この瞬間、かつての野球小僧でした。
振り切られたバットに心を躍らせて、ファーストフライが高く上がった瞬間に歯噛みし、
最後は凡退したジェイソンの見せてくれたすばらしいパフォーマンスに、手が痛くなるほど拍手をおくりました。

ホームランはやっぱり野球の華。食事で言ったら、とろけるようなサーロイン？
そこにちょろっと添えてある炒めタマネギのような僕には、真似できない、そして、
真似をしてはいけない、禁断の憧れなのです。

ペンシルベニア州フィラデルフィアにて　田口壮　

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