◎一級河川の地方移譲 ふるさと意識高める意義も
政府の地方分権改革推進委員会は、国土交通省が管理する一級河川百九水系のうち、一
つの都道府県内を流れる河川を中心に六十五水系の管理権を都道府県に移譲するよう福田康夫首相に勧告する方針を固め、石川県では手取川と梯川、富山県では黒部川、常願寺川、小矢部川が対象に含まれることになった。
それぞれ水害の歴史を刻み、治水対策が難しいことなどから国管理とされてきたが、こ
れらは郷土を代表する自然であり、県が責任をもって治水や利水、景観向上策などに取り組むことは、行政の効率化にとどまらず、ふるさと意識を高める意義も見いだせるのではないか。
むろん、大規模な河川の管理は容易でなく、財源や国出先機関の人材など相応の移譲が
伴わなければ、地方に負担を押しつけることになりかねない。移譲する水系の数はともかく、冬柴鉄三国交相も一級河川の権限を移すことを表明し、道筋は見えてきた。各省庁が移譲に消極的な姿勢を崩さない中、政府は河川を突破口に分権改革の具体論に踏み出してほしい。
河川の権限移譲論議は一九九〇年代からあったが、治水や大規模水害対策は国の基本政
策との考え方が根強く、話は進まなかった。実現までに曲折もあろうが、せっかく開き始めた重い扉を閉じさせるわけにはいかない。一級河川の移譲は国出先機関の縮小にも直結する点で、分権改革の試金石といえるだろう。
分権委が今月末に予定する権限移譲の第一次勧告には、一つの都道府県で完結する五十
三水系と、小矢部川(富山、石川)など府県境をわずかに越える十二水系が盛り込まれる。一方、国交省は二十水系程度の移譲を検討しており、勧告通りに進むかどうかは福田首相の判断に委ねられている。
手取川や梯川は白山山系、黒部川、常願寺川は立山連峰からの水の恵みであり、「暴れ
川」として流域住民を苦しめた歴史も持つ。川との闘いを抜きにしてこの地域の郷土史は語れないだろう。水を治めることは地域の総合力が試されるテーマでもあり、県がその主役になることは、地方の自立という意味でも大きな転換点になる。
◎外国の人的支援 ミャンマーは受け入れを
潘基文国連事務総長が今週中にもサイクロンで被災したミャンマーに入り、外国の人的
支援を受け入れるよう軍事政権を説得する。すでに国連緊急援助調整官室のホームズ室長がヤンゴン市で被災者支援に向けた外交努力を始めたほか、日本の木村仁外務副大臣も同市でニャン・ウィン外相らと会い、人的支援受け入れを要請した。
死者と行方不明者を合わせると、十三万人を超え、推定二百五十万人が助けを求めてい
るという。ミャンマーの軍政当局は人的支援を受け入れるべきである。
軍事政権は外交団の被災地入りをようやく認めたが、軍隊だけで十分だとして人的支援
を拒否し続けている。
国民の不満爆発を恐れてのことだろうが、外国からの援助物資の横流しや、死者数を少
なく発表しているとの情報が漏れ聞こえる。被災者全員に支援物資を手渡し、復旧に向かわせるためには外国からの人的援助が不可欠だ。
年次は違うが、ジャパンテントに参加し、ジャパンテント大使として活躍しているヤン
ゴン市在住の二人の元留学生から相次いでジャパンテント開催委員会と北國新聞社へ被災者の困窮を知らせ、救いを求めるメールが届いた。石川・ミャンマー友好協会が義援金を呼び掛けているが、支援が確実に被災者に届く仕組みができないとどうにもならない。
人間が危険にさらされた場合、国家とともに国際社会もそうした人々を守る責任がある
とし、必要な場合は国連安全保障理事会を通して共同行動を取るとの国連首脳会合成果文書が〇五年に採択されている。が、安保理が一致しないと介入できない。
今月初めの安保理非公式協議で、ミャンマーへの国際介入が話し合われ、欧米が介入を
支持したが、中国が強く反対し、ロシアなどが同調したといわれる。
中国の反対は北朝鮮への適用が出てくるのを警戒してのことだったといわれる。その後
、中国は四川大地震に見舞われ、日本などの人的支援を認めた。ミャンマーへの支援に前向きになってほしい。