このところ連日のように豆ごはんが食卓に上る。食べ物に「旬がない時代」と言われて久しいが、今の時期にしか食することのできない代表的な味覚だ。
炊飯器のふたを開けた時、立ち上る甘みがかった豆の香りに食欲をそそられる。茶わんによそえば、豆の緑とごはんの白のコントラストが涼しげだ。嗅覚(きゅうかく)と視覚も刺激され、一口、二口とはしを運ぶことになる。
豆にもいろいろあるが、豆ごはんに使われるのは、エンドウ豆の中でも実エンドウとか、グリーンピースと呼ばれる種類だ。春から初夏にかけて収穫され、さやのままで店頭に並ぶ。料理する直前に、さやから出さないと風味が落ちるからだ。缶詰や冷凍したものでは、あのおいしさは味わえない。
グリーンピースといえば、付け合わせ野菜の定番であり、シュウマイやチキンライスでは脇役といえる。それが、豆ごはんでは主役に見える。
初夏を告げる季語にもなっている。「かをりにもまづ目をつむり豆の飯」(森澄雄)には大いに共感する。「歳月やふっくらとこの豆ごはん」(坪内稔典)。食卓を囲む家族だんらんの思い出が重なる。
これから夏本番にかけて、空豆、枝豆と次々に旬の豆が登場する。親から子どもたちへ、季節の恵みを伝えていきたい。食育にもつながるだろう。