二〇〇七年度版の「森林・林業白書」は、国内の林業を取り巻く環境はなお厳しいとしながらも、二つの点で山の再生へ追い風が吹いているとし、好機を生かした林業活性化への取り組みを促している。
一つは、京都議定書の約束期間が始まった地球温暖化対策である。日本は〇八―一二年度に温室効果ガス排出量を一九九〇年度比で6%削減しなければならず、うち3・8%分をガス吸収源の森林整備で賄う計画だ。達成には約束期間中、現在より約六割多い年間約五十五万ヘクタールを間伐していく必要がある。
二つ目は国産材に対する需要の増大だ。中国など新興国の需要増に伴う外国産材の価格上昇や原油高による輸送費の増大などを背景に、国産材への期待が高まりつつある。今まで売れなかった分、国内には木が残っており、加工技術の向上で曲がり材や小径材も利用が可能になってきている。
世界的な課題である温暖化対策に山の整備が必要で、間伐材を含めて切り出した木材の需要も見込めるとなれば、確かに外材に押されて衰退した林業を再び盛りたてる好機となろう。林業者らの発奮を期待したい。
白書は、活性化に向け林業の採算性向上を訴え、方策として森林整備の集約化を挙げる。まとまった森林で間伐などを行えば収益性が高まる。白書は林業者の側から複数の森林所有者に森林作業の必要を呼び掛け、作業地を集める提案型集約化の取り組みなどを紹介している。
林業作業への機械導入も提唱し、木をつかむグラップルなどを積極活用する岡山県内の林業会社の例などを載せている。
先進事例は各地の林業者の参考になろう。しかし、木材価格の低迷は長期にわたって林業者を苦しめてきた。新規投資をやりたくてもできない事業者は多く、森林作業に当たる人々は高齢化している。白書も全産業の高齢化率9%に対し、林業就業者は26%といった数字を紹介する。山を離れ、別の場所に住む森林所有者も増えている。
山の再生は、現状のまま林業者の自主努力などに任せているだけでは難しいだろう。今国会で、温暖化対策として自治体による森林の間伐を支援する間伐促進特別措置法が成立した。交付金などによって間伐を促す。こうした国による誘導策や後押しが、もっと必要ではないか。
次代を担う若手の就業促進策や、林業経営の効率化へ専門知識を伝授する研修などについても、行政のバックアップが求められる。
児童買春・ポルノ禁止法の見直しを検討していた与党のプロジェクトチームが、改正内容で大筋合意した。今まで禁じていなかった、個人で写真や映像を集める「単純所持」を禁止し、違反には懲役刑などを科す。
一九九九年に議員立法で成立した現行法は、販売や提供目的に限って写真や映像の所持を禁じている。単純所持禁止の議論も当初からあったが、プライバシーの侵害や、別の犯罪の別件逮捕に使われるなど捜査権の乱用を招く恐れがあるとして見送られた経緯がある。
しかし、インターネットの飛躍的な普及で個人が集めた写真や画像がネットに載り、複製されて世界中に出回るようになった。歯止めには各国の連携が重要だが、主要国の中で日本とロシアが単純所持を禁じていないことがネックで、「児童への性的虐待の需要をあおっている」と批判があった。
米国や日本ユニセフ協会も日本政府に規制強化を要請している。児童ポルノまん延を防ぐには、単純所持の禁止は致し方ないところだろう。改正案にはネット接続業者について画像の拡散を防止し、捜査機関に協力する努力義務も盛り込まれた。
与党は今国会に改正案を提出し、民主党側とすり合わせていく考えだ。民主党も規制強化が必要との立場は同じであるものの、捜査権乱用などの点でなお慎重論がある。
単純所持の禁止では、迷惑メールで一方的に送られてきた画像を持っていた場合などは罪に問わない規定が盛り込まれる。捜査権の乱用についても工夫は可能ではないか。
与野党が協力し、課題に配慮しつつ子どもを守ることのできる法にしてもらいたい。国会は会期末が近づいているが、積極的に取り組むべきだ。
(2008年5月19日掲載)