「医師として善意で患者のために一生懸命やったのに、手錠を掛けられるようになっては委縮医療が進む。加藤医師は無罪と信じる。この事件をきっかけに、医師の刑事免責確立を呼び掛けたい」―。
福島県立大野病院事件で現在公判中(5月16日に結審)の加藤克彦被告への支援の輪を広げて医師の刑事免責確立を実現しようと、インターネット上に集まった医師らを中心にした活動「ボールペン作戦」が展開されている。活動に携わる医師の一人、深谷元継さんは「ボールペンという日常的に使うものを通して、自分たちがお互いにつながっているという意識を共有でき、皆が頑張っているという励ましになる。善意や思いを共有していきたい」と話し、運動の輪が医師の刑事免責確立につながってほしいと願っている。
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ボールペン作戦は、5月10日にネット上で趣旨に賛同した医師らが準備を始め、18日に開始された。趣旨に賛同した人が「我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医の無罪を信じ支援します」との文言が書かれたボールペンを使用し、周りの人たちと事件などの話題を共有することで、医師の刑事免責についての理解を深めていく活動だ。現時点で100本のボールペンが用意されている。
1本目は無料で配布するが、2本目以降は製作費用として一本につき90円以上の寄付金を納めてもらう。100本の配布が終わったら、集まった寄付金でさらに100本を製作して活動を広げていく。既に4万円の寄付が集まっているが、次の100本を製作する費用がなくなった場合は、残金を福島県産婦人科医会内の「加藤克彦先生を支える会」に寄付する。
深谷さんは「8月20日の判決がタイムリミットなので、それまでになるべく多くの人に支援の輪を広げたい。医師が善意でやったことが刑事事件として逮捕されては委縮医療を招く。『刑事免責』と言っても、言葉が抽象的で心に訴え掛けないが、加藤先生の具体的な話があればなじみやすいのでは」と語る。
ボールペンの申し込みは、120円切手を張った返信用封筒(住所、氏名記載)に赤字で「ボールペン希望」と明記の上、「〒460−0012 名古屋市中区千代田5-20-6 フクヤビル1F 鶴舞公園クリニック 深谷元継」まで。
ボールペンを複数希望する場合は、振込予定日と額、振込者名を書いた紙も同封し、返信用封筒に切手を張る(2本=120円、3−5本=140円、6−7本=200円、8−12本=240円、13−25本=390円)。宅配便希望の場合はその旨も記載する。
寄付金の送り先は、銀行振り込みの場合は「三菱東京UFJ銀行 鶴舞(つるまい)支店 普通1203866(ふかや もとつぐ)」まで。インターネット決済の「Paypal」の場合はpen@tclinic.jpに送金する。
詳細については、ボールペン作戦メインサイト。
福島県立大野病院事件は、2004年12月、帝王切開手術中の女性を、子宮に癒着した胎盤の剥離(はくり)による大量出血で失血死させたとして、当時の産婦人科医長、加藤克彦被告が業務上過失致死などの罪に問われて06年に逮捕・起訴された事件。今年8月20日に判決が言い渡される。公判では、剥離を続けた判断の妥当性などが争点となり、弁護側は加藤被告の無罪を主張している。現場の医師からは、「産婦人科医が一生に一度、遭遇するかしないかと言われるまれな症例で、医学的にみても治療に誤りはなかった」との声が上がっているが、訴訟リスクを懸念する医師らが臨床現場を離れ、重症患者を引き受けなくなる委縮医療を招いている。
更新:2008/05/19 19:25 キャリアブレイン
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08/01/25配信
高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子
医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。