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大弦小弦 (2008年5月19日 朝刊 1面)

 溝に落ちた子猫をすくい上げたことがある。もがきながら、わずかに水面に顔をのぞかせたところを、右手をいっぱいに伸ばしてどうにかつかみ上げた。

 タイミングがよかった。発見が少しでも遅れていたら、子猫は力尽き沈んでいただろう。そう、物事には時機があり、それを逸してしまうと挽回は難しくなる。命がかかわる場面ではなおさらだ。

 未曾有の大震災となった中国・四川大地震で日本政府の国際緊急援助隊の第一陣が十六日、救出活動のため、被災地に入った。地震発生から五日目だった。援助隊の団長は「(到着が)二日目だったらとの思いはある」と語っている。

 救命救急の世界に「ゴールデン72時間」という言葉があるらしい。災害救助では72時間(三日)が命のデッドラインという意味だ。倒壊した建物のがれきに圧迫され、生きながらえることができる限界ともいえる。

 阪神大震災の際、生き埋めになっていた人の生存救出率は発生初日に80%を超えたが、以降は二日目28・5%、三日目は21・8%。四日目になると急激に落ち5・9%、五日目は1・7%だった。

 がれきの上で家族の名を叫ぶ女性を見ると痛ましく、もどかしい。地震から一週間が過ぎた。だが、救える命はまだあるはずだ。救出と復興に向けてはマンパワーの集結しかない。(崎浜秀也)




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