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特集ワイド:言いたい! 売れる、血液型性格判断本

 「やっぱりB型だからね~」などと、変わり者扱いされてきたB型を取り上げた本が売れている。なぜB型なの? B型の人たちはどう思っているの? 血液型性格判断に科学的根拠はないとされているけど、あなたは、信じる?信じない?【山寺香】

 ◇ゲーム感覚で楽しめばいい--室井佑月さん(作家)

 血液型を聞かれて「B型」って答えると、よく「あーあ」って言われ空気がドヨーンとしてしまうことがあります。でも、B型で損したって感じたことはありません。私はB型が気に入っているし、周りはB型だらけ。父や息子、不思議なことに友達もほとんどB型なんです。

 血液型占いは好きでよく見ますが、けっこう当たっていると思うんです。A型は細かい、AB型は何考えているのか分からない、O型は空気が読めなくて大ざっぱとか。B型は、ほどよくこだわりがあって周りからはわがままだって言われがちだけど自分がある。

 私、嫌いな人には「あなたが嫌い」とはっきりいいます。陰で悪口を言う方がよっぽど失礼だと思うんです。B型の友達は、自分がしたいことや言いたいことをはっきり言う。O型の人って「それでいい」って周囲の意見に同調し、「あれが食べたい」とか言わないでしょう。だから、B型の中に1人違う血液型の人が入ると気を使って疲れちゃうから嫌なんです。

 血液型占いを含め、占いは全般的にクイズみたいに楽しいから好きです。でも、占い通りに行動したことって実は一度もないんです。わいわいと楽しむのはいいけれど、最終的には自分で決める。どんな高名な占師に言われても同じです。

 背中を押されることはあるかもしれないけれど、あくまで自分の考えありきです。例えば、家を買いたい時に「やめろ」って言われたら嫌だから、自分の思い通りの答えが返ってくるまで占いに通い続けます。

 日本人が血液型の性格判断や占いが好きなのは、豊かで余裕があるからでしょうね。群れて遊ぶのが好きな国民性もあるのかもしれない。でも、それで人生を決めるような人はよっぽど変わり者。ほとんどの人はそう思いながら楽しんでいると思う。占いの先生の言うとおりにしたって責任を取ってくれるわけでもありませんからね。

 そういえば、安倍(晋三)前首相もB型なんですよね。けれども、私はB型=KY(空気が読めない)ではないと思ってます。KYだったら私はコメンテーターなんかやっていられませんからね。でも、考えてみたら、安倍前首相は人の意見を聞かずに突然辞任したので、B型っぽいとも言えますね。

 占いって「○○だ」って書いてあって、一方では「こういう部分もある」って書いてあるでしょう。どれかに当てはまるのは当たり前。だから、ゲーム感覚で楽しめばいいんですよ。血液型と性格の関係には科学的な根拠が無いって言う人がいますが、私はそういう人は余裕の無い人なんじゃないかって思っちゃう。

 どうしても譲れないことが多いから、B型は「わがまま」とか「自己チュー」って言われるけれど、私はB型の自分が好きなんです。好き嫌いがはっきりしているおかげで、好きなことを見付け、好きなことを仕事にできているんですから。

 ◇「差別」につながる危険性も--菊池誠さん(大阪大教授)

 血液型から性格が分かるとか、行動から血液型が当てられるといった話に科学的な根拠はありません。心理学の調査では、血液型が個人の性格を決めるという傾向は見いだされていないのです。それなのに科学的根拠があるかのように主張する血液型性格判断は偽科学と言っていいでしょう。科学的根拠がないと知っているのに「でも当たっているし……」「今後、関係が証明されるかも……」などと言う人もいて、いわば迷信的に広く薄く信じられています。一部の人に強固に信じられるよりも根深く、対処が難しい。

 血液型性格判断が当たると感じる理由の一部は「バーナム効果」という理論で説明されます。誰にでも当てはまるようなあいまいな内容を「自分に当てはまる」と思い込む現象。作家の松岡圭祐さんが著書「ブラッドタイプ」の宣伝用に開設したウェブサイトで「究極の血液型心理検査」と題したテストを行ったところ、でたらめな内容なのに9割近い人が「自分に当てはまる」と答えたそうです。

 血液型による性格分類が一般に広まったのは、71年の能見正比古さんの著書「血液型でわかる相性」がきっかけです。最近は韓国でも話題になっていますが、根強い血液型ブームは日本独特の現象です。

 その理由は、A型4割、O型3割、B型2割、AB型1割という日本人の血液型分布にありそうです。血液型分布は国や民族によってかなり違います。B型が性格判断で悪く言われるのは、5人に1人という割合が差別するのにちょうどいいからと考えられます。70~80年代に放映された恋愛バラエティー番組「プロポーズ大作戦」の「フィーリングカップル5対5」でも5人目がボケ役でしたね。多数派のA型やO型の性格が悪く扱われていれば、これほど広まっていないと思います。

 血液型による差別は実際に起こっています。20年ほど前、大手家電メーカーがユニークな商品を開発しようとAB型だけの社員を集めたプロジェクトチームを作りました。最近でも、幼稚園で血液型別のクラス編成をした例とか、企業の採用面接で特定の血液型は採用しないと言われた例などもあります。

 BPO(放送倫理・番組向上機構)は04年、科学的裏付けがないのに実証済みのように取り上げることは「差別に通じる危険がある」として、血液型番組を作る放送局に配慮を求めました。「ブラッドタイプハラスメント」という言葉もあるくらい本当は深刻な問題なのです。

 個人の努力ではどうしようもないことで差別してはならない、というのが基本的な考え方ですが、血液型によって性格を決めつけることはまさにそれに当たります。血液型性格判断は差別につながりかねないということを常に頭に入れておくべきですね。初対面の相手にいきなり血液型を聞く人もいますが、血液型は年齢や親の職業などと同じレベルの個人情報です。

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 ■人物略歴

 ◇むろい・ゆづき

 1970年、青森県生まれ。モデル、女優、レースクイーン、銀座のクラブホステスなどを経て作家に。著書に「子作り爆裂伝」「ママの神様」など。コメンテーターとしても活躍。

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 ■人物略歴

 ◇きくち・まこと

 1958年、青森県生まれ。大阪大サイバーメディアセンター教授(物理学)。オウム真理教事件をきっかけに偽科学を批判。著書に「信じぬ者は救われる」(香山リカ氏との共著)。

毎日新聞 2008年5月19日 東京夕刊

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