H5N1型という“敵”に日本が採るべき策

強毒型ウイルスは体を“溶かして”死に至らしめる

 ここで、強毒型のインフルエンザ・ウイルスに感染するということの意味を示す写真をお見せしましょう。H5N1にやられた鶏舎の中の写真です。お分かりでしょうか。中央に写っている鶏の下に鶏の死骸が写っています。

写真/岡田 晴恵氏 提供

――とさかとけづめの位置が不自然ですが‥‥

岡田:死骸が溶けているのです。強毒型ウイルスは全身感染を起こします。全身の細胞を破壊しますから、鶏の体は元の形を維持することができずに溶けたようになって死ぬのです。

――これは‥‥他の動物でも同じような死に方になるのでしょうか。例えば人間でも。

岡田:現状の鳥インフルエンザでは、人間が溶けて死ぬことはありません。しかし、新型インフルエンザが出現した場合は、この鶏のように人が死んでいくことになるのかも知れません。そうなると、溶けた遺体には当然のことながら大量のウイルスが含まれることになるでしょう。感染を防ぐために遺族は遺体に触れることもできません。通常の手順での葬儀は不可能です。死体を入れる袋も、防疫のために液体が漏れないような二重になった特別なものが必要になります。

――実際、全世界の感染者が400人未満で済んでいる現状が信じられないほどですね。

岡田:その数字は世界保健機構(WHO)が出している数字ですよね。信じているわけですか?

――どういう意味でしょうか。

岡田:WHOが出している数字は確定症例です。つまり、ウイルスの検査まで行って「明らかにH5N1型の鳥インフルエンザである」と診断が確定した症例の数です。そもそも調査が行われなかったり、診断が確定しないまま、死亡したというような例は、確定症例の数倍以上になると推定されています。

――つまり実際には既に、もっと多数の死者が出ているということですか。

岡田:例えば、アフリカ大陸には既に鳥インフルエンザが入ってしまっています。アフリカの場合、政府組織が十分に機能していない地域もあるので、WHOにも報告が上がってきません。現地で何が起きているか全く分からないのです。あるいはインドネシアの奥地や中国内陸部など、それぞれの国の政府が十分に把握できないでいる地域もあります。ウイルスは人間の行政機構とは無関係に感染を拡大していきます。

 従って、専門家の間ではWHOの確定症例は「氷山の一角である」という見方が一般的です。WHOが出している数字は、水面上に顔を出した氷山のごく一部でしかないのです。

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