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「医療不安」

保険証未着260件 混乱

2008年04月16日

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75歳以上に送られてくる新しい保険証の見本。名刺ほどのサイズになっている

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後期高齢者医療制度を担当する部署の窓口には大勢の高齢者が相談に訪れた=佐賀市栄町の佐賀市役所

 「年寄りは早く死ね、ということか」――。75歳以上が加入する後期高齢者医療制度(通称・長寿医療制度)の導入に伴う、年金からの保険料天引きが始まった15日、県内各自治体の担当窓口には問い合わせや苦情が殺到し、職員が対応に追われた。制度が始まって2週間たつが、保険証が届いていない事例は260件以上にのぼり、再発行も相次ぐなど、現場は混乱を続けている。

 唐津市によると、15日の問い合わせ件数は100件を超えた。年金から天引きされた保険料の説明を求める質問がほとんどで、電話が鳴りっぱなしだったという。小城市でも60件以上の問い合わせがあり、職員が昼食休憩を切り上げて対応に追われた。制度が複雑なこともあり、1時間以上もの説明が必要だった高齢者もいたという。

 佐賀市にも100件以上の問い合わせがあったが、「一方的に天引きしてけしからん」「負担が増えたではないか」といった苦情や不満が6〜7割を占めた。市保険年金課の担当者は「我々に言われても困るのですが、制度の趣旨を説明し、頭を下げるしかない」と疲れた様子だった。

 一方、病院も混乱している。神埼市内の内科医院では、制度が始まって2週間たった今も、新保険証を持ってこない人が数人いるという。院長は「窓口での説明が長引き、受付は混雑している。制度を理解しているお年寄りはほとんどいない」と話す。

 佐賀市のJR佐賀駅前では、県保険医協会の職員らが制度撤廃を通行人に訴え、「保険料を滞納したら保険証取り上げ」と問題点を指摘したパンフレットを配ったり、署名を集めたりした。昨年12月から集めた署名は約千人で、今月中にも衆参両議院の議長に送付するという。

 パンフレットを受け取った小城市の男性(82)は、年金から4千円あまりを天引きされた。新制度により、年額4千円あまり負担が増すという。男性は「預金を取り崩して生活しているので、この先どうなるか不安。なぜ、高齢者だけを分ける必要があるのか。早く死ねと言われているようなもの。こんな制度はいらない」と怒った。

 制度を運営する県後期高齢者医療広域連合事務局によると、14日現在で保険証が本人に届いていないのは264件。「本人不在」で返送されてくるケースが多いという。保険証が小さいせいか、紛失する人も続出。10日現在で629枚が再発行された。

 県によると、制度についての各自治体への問い合わせは、4月に入ってから連日のように600件を超えているという。15日に会見した古川康知事は、「私の周りでも制度をしっかり理解している人は少ない。結果的には、制度の説明不足と言うことになる」と述べ、国の対応を批判。「県内のいろいろな声を分析して、制度を改めてもらう必要があれば、(国に)出していく」とした。今月中にも広域連合を通じて県内の状況を把握するという。

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