ここから本文エリア 医師不足 解消できず2008年05月09日
◆津和野共存病院、指定管理者制導入1カ月◆ 経営難に陥った津和野共存病院(津和野町森村)を同町が買い取り、町営化して1カ月が過ぎた。経営母体だった石西厚生農業協同組合連合会(石西厚生連)は、町営化した3月31日以降も指定管理者として運営を続ける。重荷だった金融機関からの借入金は、病院施設などを町に売却して得た資金で完済したが、医師・看護師不足など課題は山積する。町内で唯一、入院機能を持つ病院の再出発から1カ月あまりを追った。 ◆「診察増を」住民ら要望◆ 「医師が増える見込みは」 1日夜、津和野共存病院の近くの農村勤労福祉センターで、石西厚生連は住民との懇談会を開いた。町営化と同時に副院長から昇格したばかりの木島聡院長(50)が、集まった約15人の質問に答えた。 同病院の診療科は内科や産婦人科など9科。町営化前と科目数に変わりはないが、03年度に12人いた常勤医師は5月からは5人、看護師はピーク時より20人少ない約40人に減った。06年8月から大きな手術は実施できず、産婦人科も分娩(ぶん・べん)はできない。 住民からは「再診が2カ月先になることがあり不安だ」「先生の顔を見るだけで安心なので診察の機会を増やして」などの意見や要望が相次いだ。 ■借入金を完済 石西厚生連は1919(大正8)年、貧困で医療を満足に受けることができない農民を救済しようと、全国に先駆けて旧日原町(現津和野町)に設置された産業組合立の診療所を原点とする。津和野共存病院のほか、旧日原町に日原共存病院と老人保健施設を運営していたが、全国的な地方の医師、看護師不足や診療報酬の引き下げで経営が悪化した。 05年度からは町が毎年1億〜2億円前後の運営資金を貸し付けたり、補助したりする支援に乗り出した。厚生連も昨年11月、入院受け入れを津和野共存病院に集約して日原共存病院は診療所に衣替えする経営改善に取り組んだ。 しかし事態は好転せず、最後は「地域医療や雇用を守る」(中島巌町長)として、町が3月、3施設と設備などを計13億687万1千円で買い取り、厚生連はその収入で病院などの建設に伴う金融機関からの借入金(06年度末で約9億5千万円)などを返済した。 ■救急指定返上 共存病院は99床。現在は64人の入院患者がいる。06年12月に「救急指定病院」を返上し、夜間は入院患者に対応する当直医しか置いていない。当直医は緊急時の応急処置や電話相談に応じているが、救急患者は約40キロ離れた益田市の益田赤十字病院や隣県の山口市などに搬送される。 木島院長は「急患の受け入れができないことなどで『怠慢だ』という指摘を受けることもあるが、したくてもできないのが現状だ」と打ち明ける。 厚生連が指定管理者に指名されたのは今年度末までの1年間。町に対し、月額157万5千円の施設利用料を支払う契約だ。「経営の安定」と「地域医療の確保」。二つの課題の達成に向け、町にとっても厚生連にとっても正念場の1年となる。 マイタウン島根
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