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【主張】後期高齢者医療 制度の理念曲げぬ改善を
75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の運用面での改善に向け、政府・与党の協議が近く本格的にスタートする。
新制度移行に伴って、市区町村が独自に行っていた減免措置が利用できなくなり、低所得者層でも保険料負担が大きく増えたケースがある。改善策では、こうしたお年寄りたちへの対応を優先させる考えだという。高齢者の不安や不満が少しでも解消される対策となるよう期待したい。
新制度の保険料は、低所得者向けに、加入者全員が均等に負担する「均等割」部分を2割、5割、7割の3段階で軽減する措置が講じられている。政府・与党が検討しているのは、これに9割軽減を新設する案だ。保険料軽減判定の基準を世帯所得から個人所得に変更する案も出ている。
だが、免除割合を単純に拡充するだけでは問題の解決とはならないだろう。高齢者が抱える悩みはそれぞれ異なる。政府は、高齢者の生活実態を正確に把握し、手助けを必要としている人が救済対象から漏れることがないよう、万全を期してもらいたい。
与党内では、現在7割軽減対象となっている人を全員9割とする案や、5割や2割軽減の対象者も含めて全体的に軽減率を引き上げる案も浮上している。
ただ、激変緩和の名の下に全員一律に軽減幅を拡充するのでは、バラマキとの批判は免れまい。新制度に対する国民の批判回避を優先するあまり、「とにかく保険料を軽減すればいい」と考えているのだとしたら問題だ。
少子高齢化で高齢者の医療費はさらに膨らむことが予想される。子供や孫の世代にツケを回すわけにはいかない。軽減策の大幅な拡充は、巨額な財源を必要とすることも忘れてはならない。
新制度は、高齢者本人にも能力に応じた負担を求める仕組みだ。行きすぎた軽減策は、新制度の理念そのものをゆがめることにもなりかねない。
厚生労働省は保険料負担の増減について実態調査を行っている。追加軽減の対象者は、負担増で暮らしが本当に困窮する人に限定すべきだろう。
新制度が目指す方向性は間違っていない。政府・与党は国民の批判に浮足立つことなく、理解を求めるべきところは十二分に説明を尽くすことが大事だ。