◎四川大地震 県民の備え「8割無し」では
中国の四川大地震の惨状は、悲惨の一言に尽きる。一年前の能登半島地震を思い出し、
改めて地震被害のすさまじさに身を震わせた県民も多いのではないか。
私たちが今できるのは、被災地の一日も早い復興を祈るだけでなく、自分自身や家族を
地震から守る対策を見直すことである。北陸三県の消費生活支援センターが先月発表した防災対策アンケートでは、石川県人の八割近くが災害対策をしていないと回答した。災害は「のど元過ぎれば」の側面があるのはやむを得ないが、せめて大災害があったときぐらいは総点検して、備えをより手厚くしてはどうだろう。
防災対策アンケートのチェック項目を参考にして、「家具を転倒防止具で固定する」「
寝室に家具を置かない」「非常用持ち出し袋を用意する」「高所に物を置かない」「消火器の点検をする」「家族で避難先や連絡場所を決める」など、簡単にできることから始めたい。自宅の耐震構造が不安な場合は、行政や専門家に相談し、耐震改修の補助制度の活用を検討してほしい。
北陸三県の消費生活支援センターが約二千五百人から回答を得た調査では、「対策をほ
とんどしていない」が56%(石川県54%)、「していない」が22%(同18%)だった。寝室に家具を置かないようにしているは27%(同28%)、家族で避難場所や連絡先を決めているは23%(24%)に過ぎない。被災地の能登地区の三市四町では三県平均より対策をしている率が高かったが、それでも家具を転倒防止具で固定しているは26%、高所に物を置かないは34%にとどまっており、防災意識はまだまだ遅れていると言わざるを得ない。
また、住宅の耐震化も大きな課題である。石川県は〇五年末で71%にとどまっている
耐震化率を一五年度までに90%に、富山県は85%に引き上げる目標を掲げているが、内閣府の調査では73%が「費用がかかる」「必要性を感じない」との理由で耐震工事の予定はないと回答している。費用をあまりかけずに耐震補強ができないか、行政を窓口にして、専門家のアドバイスを受けてはどうだろう。
◎終身刑創設論議 無期の運用実態明らかに
与野党の国会議員約百人が「量刑制度を考える超党派の会」を発足させ、終身刑の創設
を本格的に検討することになった。死刑存置派、廃止派が集まり、それぞれ思惑が入り乱れているが、現行の死刑と無期では刑の重さに大きな差があり、その差を埋めるために「中間刑」を設けるという方向性は理解できる。国民的な議論にするためには、まず無期刑の運用実態を明らかにする必要があろう。
無期刑は死刑に次ぐ重罰でありながら、法律上は十年経過すれば仮釈放の対象となる。
法務省によると、二〇〇六年に仮釈放された受刑者の平均在所期間は約二十五年で、近年は長期化する傾向にあると言われるが、仮釈放がどんな基準で認められるのか、服役後の実態は明らかでない。来年五月施行の裁判員制度では、死刑か無期刑もありうる重大事件が対象となるが、無期刑の重みを理解しなければ量刑判断は難しいだろう。
「量刑制度を考える会」は、死刑と無期刑の間に、原則として仮釈放のない終身刑の創
設を検討する。秋に想定される臨時国会に議員立法で改正案提出を目指す。死刑存置派と廃止派の議員が立場を超えてメンバーに名を連ねたのは、死刑制度の是非は議論しないという申し合わせをしたためだ。
ただし、両者の間には思惑に隔たりがある。死刑存置派が終身刑創設で厳罰化を意図す
る一方、廃止派は実質的に死刑を減らし、最終的には死刑の代替刑にしたいという考えがあるようだ。だが、内閣府の調査では「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えた人が八割を超えており、死刑制度廃止は軽々に論議できる状況にはないだろう。
無期刑の仮釈放禁止期間を大幅に延長する形の終身刑とするのか、あるいは仮釈放を認
めない終身刑とするのか。法務省は後者について「死ぬまで刑務所に出られないのは死刑より残虐」と否定的な立場を示している。いずれにせよ、多くの国会議員が量刑制度見直しで一致したことは大きな意味がある。それぞれの可否を十分に検証し、論議を深めてほしい。