福田康夫首相や自民党への支持が低調な理由を考えてみた。
与党は4月末の歳入関連法に続き、5月13日に暫定税率を10年間保障する道路整備特別措置法案を3分の2の多数を持つ衆院で再議決した。「ねじれ国会」で憲法の規定を行使することは、伝家の宝刀にも値しないほど当然になりつつある。
ひるがえって自民党内には後期高齢者医療制度や年金記録問題などを念頭に「福田さんが首相になる前の問題だ」といった同情論が根強くある。「今までの政権が積み残したツケを背負った首相は、自分がやりたいこともやれない」という論法だ。それも一面の事実だろう。
しかし、衆院再議決が可能となったのは、小泉政権下で行われた3年前の郵政選挙で自民党が圧勝したからだ。決して福田首相の力ではない。首相の力量不足を批判した上で再議決を主張するなら分かるが、今までのツケは首相以外の責任とするのでは筋が通らない。政権交代しても清濁併せのむのが与党だろうに、実に都合が良い二重基準を駆使している。
平成21年度から道路特定財源を一般財源化する首相の方針に対し、与党の若手らは閣議決定という担保を求めた。首相の威厳もあったものではない。首相は3月27日の記者会見で一般財源化を国民に約束した。公約を実現できずにクビを切られるなら分かるが、具体的な行動を起こす前から身内に信頼されていないわけだ。首相もズルズルと政府・与党合意や閣議決定の屋上屋を架し続け、せっかくの「英断」は色あせた。
そもそも若手らが錦の御旗のようにあがめる閣議決定は、そんなに重いか。政府は14年3月に人権擁護法案を閣議決定したが、いまだ実現していない。なにしろ首相自ら「必要なときには閣議決定を直すことはできるから、そのときの状況で判断すればいい」(昨年10月9日の衆院予算委)と答弁した「前科」がある。
若手らは、一般財源化と、道路特定財源維持を前提とした道路整備特措法案が矛盾すると追及した。しかし、3月13日に衆院で同法案に賛成したのは与党議員だった。首相の一般財源化表明はその後のこととはいえ、首相の公約を色あせさせた当人たちは、自らの国会での投票行動にはほおかぶりをする。本当に一般財源化が正しいと思っていたのなら最初から反対すればいいのに、そんな度胸もない。こうした二重基準を都合良く使ういかがわしさを国民は見ている。(酒井充)
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