3月に北海道赤平市を訪れる機会があった。財政破たんした夕張市に近く、やはり財政再生団体に陥る危機にある。最盛期に6万人いた人口は炭坑の閉山とともに約1万3千人にまで減少。65歳以上の割合が35%を超え、昼間に通りを歩くとお年寄りの姿が目につく。
市職員は「夕張のように赤字隠しをしてきたわけではない。行財政改革にも取り組み続けているのに…」と肩を落とす。全国から「第2の夕張」のレッテルを張られることに、役所も市民も食傷気味の様子だ。
財政圧迫の要因の一つが、15年前に改築した市立病院の借金返済だ。現在の市の規模からすると立派すぎる施設の建設について、計画の甘さを責められても仕方ない。ただ沖縄でも各地を見渡せば、今後の維持コストが心配になる豪華な公共施設はいくらでもある。少子高齢化で人口構造が変化すれば、いずれ多くの自治体が赤平と同じ苦悩を抱えるだろう。
行政も経済も「拡大・増加」が続くことを当然としてインフラを整備し、制度をつくり上げてきた。「減少・縮小」を前提とした上で、社会の発展を持続させる方向へと発想の大転換が必要だ。
今のところ沖縄県は10都府県しかない大都市と並ぶ人口増加県だ。人口減少の切迫感は薄い。だが全国一の出生率1・72でさえ、人口維持に必要とされる2・07に及ばない。備えは大丈夫だろうか。
「後期高齢者医療制度」をめぐる混乱は、発想の転換を怠った政府の急場しのぎの“つけ”のように思える。
(与那嶺松一郎、政経部)
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