★スタジオ
（和久井キャスター）
いま、大型銭湯が存続の危機に立たされています。
原油高騰に加えて追い討ちをかけそうなのが
これまで免除されていた下水道料金の負担です。
いったいなぜなのか、その背景を取材しました。
★ＶＴＲ
（こうしんの湯、札幌・東区）
札幌・東区の大型銭湯です。７年前に開業したこの銭湯。
露天風呂や広い浴槽を備えています。
しかし、いま原油の高騰が経営を圧迫しています。
（重油購入価格の資料）
この銭湯が業者から購入した重油の価格。
３年前は１リットル３７円８０銭。
これが、先月には７６円５０銭と２倍以上になりました。
（こうしんの湯・岩波邦夫社長の話）
「いろいろな部分で八方ふさがりですね。
重油価格が上がってますし重油がなければ湯を沸かせない。
非常に負担ということですね」
（開店前の露天風呂）
とはいえ、銭湯は入浴料金が定められていて
店が独自に値上げすることはできません。
このため節約に知恵を絞ります。
開店前、この銭湯の露天風呂にはシートが被せてありました。
（こうしんの湯・岩波邦夫社長の話）
「燃料、燃料。シートがない状態だと１０度くらい下がるのですよ」
止まらない原油の高騰。こうした中
銭湯はいま新たな負担を迫られています。
（銭湯の下水道料金に関する審議会、去年９月・札幌）
去年９月、札幌で開かれた有識者による審議会。
銭湯の優遇措置のひとつとして
無料となっている下水道料金を銭湯側に負担させるべきと
上田市長に提言しました。
（上田札幌市長の話）
「下水道料金の減免は少しバランスを欠く」
原油高騰の中での下水道料金の負担という今回の提言について
中小の銭湯が加盟する組合に聞いてみると。
（札幌公衆浴場商業協同組合・小西廣幸理事長の話）
「我々も業としてやっている以上、下水道料金を
負担すべきと組合員の一致した意見をいただいている」
意外にもこちらは、負担に“賛成”。
一方、さきほどの大型銭湯に聞いてみると。
（こうしんの湯・岩波邦夫社長の話）
「現状では無理だと思います。負担しがたい、負担増になります」
こちらは“反対”。この温度差、なぜなのでしょうか。
（札幌市の文書）
これは、札幌市から大型銭湯に宛てられた文書です。
毎月の下水の排出量に一定の区切りを設け、
料金設定をわけると記されていました。
（札幌市の料金案のグラフ）
札幌市が１１月に示した料金案はこうです。
月２０００立方�辰魘�に料金が跳ね上がります。
平均排出量から毎月の下水道料金をはじき出すと。
中小の銭湯は１万円。大型の銭湯の場合は６０万円にものぼります。
つまり、組合に加入する中小の銭湯は負担を軽く、
組合に加入しない大型の銭湯の負担は重くという意図があったのです。
（上田札幌市長の話）
「小規模の銭湯は負担を少なくしなければ経営が立ち行かなくなる。
配慮をしなければならない」
（札幌市役所）
中小の銭湯が加入する組合が下水道料金の負担に
“賛成”している理由がここにありました。
（札幌市議会建設委員会）
さらに、驚くことに今回の下水道料金の負担について
札幌市は組合側とだけ話を進めてきたことを明らかにしました。
（札幌市の担当者の話）
「浴場組合の方と実務レベルでは対応を相当回数検討してきた。
私自身も組合の役員と話し合いをしてきたところであります。
一方で大型との話し合いの機会はなかった」
こうした市側の対応に市議会議員は。
（市議会議員の話）
「急展開するんだよ、下水道料金の負担を求めるのは。
あなた方は配慮が足りない。最高の燃料代になている時期ですよ」
（道内市町村アンケート）
今回、銭湯の下水道料金について、減免制度を設けている
道内４３の市町村に聞いたところ、旭川市を除くすべての市町村が
中小や大型の区別をしない料金体系でした。
ただひとつ、中小と大型の区別を設けていた旭川市です。
（旭川市水道局）
旭川市の場合、３年前に料金を改定しました。
きっかけは、大型銭湯が新規参入したことでした。
（旭川市水道局・竹内貴信さんの話）
「大型銭湯は中小の銭湯と違いレジャー的要素がある。
すべての部分を減免するのはいかがなものかと」
（大雪乃湯、旭川市永山）
旭川の大型銭湯です。下水道料金の減免などの優遇措置を受けてきました。
しかし、旭川市による料金の改定で毎月の下水道料金が
十数倍に跳ね上がる危機を迎えました。
（大雪乃湯・菊池隆博支配人の話）
「かけたはしごをはずされるようなことをされてしまうと
元々それで収支を立てていますから、大元からくるってしまう」
旭川市との話し合いの結果、新しい下水道料金は
既存の銭湯には適用しないことになりました。しかし、なぜ旭川市が
突然、料金の改定に動いたのか？疑念だけが残りました。
（大雪乃湯・菊池隆博支配人の話）
「大型銭湯だけが、かなりの金額を強いられるような設定で
大型銭湯の経営をできなくしてしまえとのスタートだった。
それが札幌に飛び火した」
（大型銭湯の会議、札幌）
この日、組合に加入しない札幌の大型銭湯経営者らが集まり、
札幌市とどう交渉を進めていくのかなど話し合いました。
（大型銭湯関係者の話）
「札幌市が銭湯の経営者に対し配慮しているのか投げかけたい」リーンリバー】
「排出量が多いことが悪になっているのが納得できない」
もし、札幌市の案に近い状態で料金が決まると
浴槽の湯の取替えなど衛生管理にも影響が出るといいます。
（こうしんの湯・岩波邦夫社長の話）
「どうしようもないという判断になった場合は
３日、４日に１回の水の交換が５日になったり、
経営が立ち行かなくなる銭湯も間違いなく出る」
大型銭湯の経営者たちは、これからどれだけの負担を
強いられることになるのか、不安を抱えながら営業をつづけています。
ＥＮＤ
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