Story◆

星歴(せいれき)・2×××年。世界戦争が多く起こり、地上が壊滅まで追い込まれた。

女性の誕生率は極度に減少し、少年達は兵士として戦場に送られる為、管轄は違うが、どちらも軍の施設内に置かれていた。
 その為、女性は子供を生む為の存在とだけしか待遇されず、待遇されているとはいえ、施設にて無理矢理に誰かも判らない、特に優れた男性の遺伝子を受け入れさせられ、子供を産まされていた。だがそれに耐え切れず、自ら命を絶つ女性も絶えなかった。

そして施設の少年達は、生まれてからすぐに親の顔も知ることなく母親から引き離され、軍の管轄内の施設にて育った後、戦闘能力が優れていると判断された者だけ、戦闘兵器として改造を施されるのであった。

その中で、未だあどけなさが残る少年――響(キョウ)は戦闘能力において最も優れていた。しかし同時に彼は、無闇に争い、人を傷付ける事を嫌う性格でもあった。
 だが軍はそんな彼の勝手な性格を受け入れず、戦場に送り込む毎日だった。
 
 段々と血生臭く染まっていく己の手と心――自我が己を失うことを恐れていた彼が抱いた葛藤の中、“キョウ”の中に生まれたもう一人の存在――“ヒビキ”。彼は言った。

 『キョウ、お前がこの現状に苦しんでいるというのならば、俺が変わりにお前になってやる』

――救われるかもしれない。今なら。

そう思ったキョウは、ヒビキの魂を受け入れることとなる。

その後、ヒビキは戦場にて、更なる功績を幾つも残した。――“大切なキョウ、お前を守る為”。
 最初はそう思い、闘っていたが、自分の足元に転がる幾つもの、“人間であったモノ”を見ていくうちに、自らの手が血に染まることに快感を覚え、そしてそのことに楽しんでいる己の心にも気付く。

――なんて脆く、儚いのだろう。命は。その儚いものが散る瞬間が、どれだけ美しく、快感であるか。

次第にキョウ、否、ヒビキは周囲、そして敵軍から、“赤刃(セキハ)の堕天使”と呼ばれるようになっていた。

そして数年後――
 あまりにも荒れた地上に住めなくなった人間は、軍が同時に遂行していた、<他星へ移住する計画>を実行に移すことになる。

 自分達が住んでいた、<チキュウ>に最も同等した星を選び、そして<人間>は、移住した。

 その移住した星で、またもや争いが起こり、そしてキョウとヒビキが巻き込まれていくことになるとは知らずに――……