医療事故で亡くなった患者や家族らを中傷する内容の書き込みがインターネット上で横行しているとして、事故被害者の遺族らが十八日までに、実態把握や防止策の検討に乗り出した。悪質な事例については、刑事告訴も辞さない方針だ。
遺族らは「偏見に満ちた書き込みが、医師専用の掲示板や医師を名乗る人物によるブログに多い。悲しみの中で事故の再発防止を願う患者や遺族の思いを踏みにじる行為で、許し難い」と指摘。
厚生労働省も情報を入手しており、悪質なケースで医師の関与が確認された場合は、医道審議会で行政処分を検討する。
中傷を受けた遺族や支援する弁護士ら約二十人は四月、大阪で対策協議会を開催。日弁連人権擁護委員の弁護士も出席した。会場では被害報告が続出し、今後も情報交換を続け、対応を検討することを確認した。
メンバーの一人で高校教諭勝村久司さん(46)=京都府=によると、中傷は「事故の責任は医師にはなく、悪いのは患者」といった趣旨が多い。二〇〇四年に福島県立大野病院で帝王切開手術を受けた女性=当時(29)=が死亡した事故で、〇六年二月に産婦人科医(40)が逮捕された直後から目立ち始めたという。
対策協議会が集めた資料によると、この事故をめぐっては今年一月、医師専用の掲示板に、被害者の家族を攻撃する書き込みがあった。
この掲示板は医師を対象とした会員制。〇六年十月にも、奈良県内の病院で同年八月に起きた医療事故により死亡した妊婦=当時(32)=の夫への悪質な中傷が載った。県警は書き込んだ医師を特定。奈良区検が侮辱罪でこの医師を略式起訴し、昨年九月に奈良簡裁が科料九千円の略式命令を出した。
掲示板の運営会社(東京)は「奈良の事件後、すべての書き込みをチェックし、不適切と判断したものを削除するなどの対策を取っている」としている。
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