和久井リード)
「私は存在しなかった」…。
それまでの人生のほとんどを
戸籍がないまま
生きてきた女性がいます。
就職もできず健康保険にも入れず
過ごした27年…、
女性にはナゼ戸籍が
なかったのでしょうか。
VTR
【女性、部屋入り】
札幌の由紀さん29歳。
27年もの間、
戸籍がありませんでした
【音 女性】
「実際自分は生きているのに
書類上は存在しないことに
なっている」
「ショックでした」
【町を歩く女性】
由紀さんに戸籍が
なかった理由…、
それは由紀さんが
生まれたときに
母親が複雑な事情を
抱えていたからです
【音 女性】
「私が生まれた当時、
別の人と結婚していて、
離婚しないまま
出産出生届けを出せなかった」
【街頭の親子連れ】
由紀さんが生まれる4年ほど前、
母親は夫の元を飛び出しました。
その後、
母親は夫と離婚できないまま
別の男性と出会いました。
【母親に電話をかける】
由紀さんの母親が
家を飛び出したのは、
夫からの激しい暴力が
あったからです。
【音・電話の母親】
「覚せい剤をやっていたから
限度がないんです
殴られて、殴られて
木刀だったと思う。
今もほとんど左眼が見えない」
【DV再現映像】
絶え間ない
暴力から逃れるため
母親は偽名を使って
別の町で生活しました。
居所を知られるのを恐れ、
離婚の手続きができませんでした
そして二年後に別の男性との間に
由紀さんが生まれました。
【音 母親】
「それは悩みました、
産んで大丈夫かと
だけどどうしても欲しくて
たまらなかった」
【区役所看板 窓口】
母親は由紀さんの
出生届を出そうと
区役所を訪れました。
しかし、窓口で言われた
ひと言で怖気づいてしまいます。
【音 母親】
「出生届を出したら
相手の戸籍に入ってしまう」
私の居所もわかってしまう」
それは出せなかった」
【戸籍法】
法律上、
婚姻関係が継続していれば
別の男性との子供も
法律上の夫の戸籍に入り
子供の存在も
知られてしまいます
【音 母親】
「死ぬほど怖かった、
わかったときは一緒にいる人も
子供も全員殺されると
思っていた」
【親子連れ 病院看板】
結局、母親は出生届けを出さず
子供を育てはじめました。
戸籍がなくて一番困ったことは
医療だったと言います。
【健康保健証】
戸籍がないと
健康保険に加入できないからです
このため医療費は
全額自己負担でした。
【音 母親】
「保健に加入できない、
病気になったらちょっと
風邪をひいても万単位でした」
【少女歩き・小学校看板】
戸籍がないまま
由紀さんは成長し
小学校入学を迎えます
【音 由紀さん】
「小学校・中学校は
親が事情を話し
いれてもらった」
【市教委】
札幌市教育委員会は
戸籍がなくても
学校への入学を認めています
【音 札幌市市教委 足羽 課長】
「教育の機会を保障するため」
【市教委ひき】
由紀さんのようなケースは
ほかにもあるといいます
【音 市教委】
「年間1〜2人、
戸籍がないで
入学する子がいる」
【実際に通った小学校】
由紀さんが通った小学校です。
戸籍がないまま
小学校・中学校、そして高校を
卒業することができました
しかし、就職は
できませんでした。
【音 由紀さん】
「就職して社員で働くと
社会保険を
つけなければならなく
住民票の提出ができなく
辞めるような形で
アルバイトするしかなかった」
【区役所】
自分の戸籍に
疑問を抱き始めた由紀さんは
ある日、意を決して
区役所を訪れました。
【音 女性】
「戸籍をとりに区役所にいって
ないといわれて、それで
わかりました
20歳の時です」
【音 母親】
「謝りました。そういう状況でも
欲しくて産んでしまったと、
謝りました」
【家裁 審判室】
娘の戸籍を取ることを決意した
母親は家庭裁判所を訪ねます。
元の夫は既に死亡し、
離婚も成立していましたが
新たに由紀さんの戸籍をとるには
複雑な手続きが必要でした。
【CG】
まず元の夫と由紀さんとの間に
親子関係がないことを
証明します。
これは元の夫が
由紀さんが生まれた当時、
刑務所に服役していたため
比較的容易に証明できました。
次に実の父親と由紀さんが
親子であることを
証明しなければ
なりませんでした。
【DNA鑑定】
このため由紀さんと母親、
そして実の父親は
唾液をとってDNAを鑑定し、
その結果を提出しました。
【枯れ枝に雪が降る】
手続きを始めてから
戸籍がとれるまで
6年余りが経っていました。
6分30秒
【音 由紀】
「両親とも自分の子供と
言っているのに
なんでこんなに
難しいのだろう」
【埼玉の事件】
先月、埼玉県で事件を起こして
逮捕された男も
戸籍がないことがわかり
波紋を呼びました。
いったい戸籍のない人たちは
全国にどれくらいいるのか。
しかし、法務省は
把握のしようがないといいます
【受話器アップ】
27年間戸籍がなかった
由紀さんの母親は
自らの体験を踏まえ
戸籍を出せずにいる人に
こう訴えます
【音 母親】
「いまそういう人がいれば
出て欲しい、戸籍がないと
なにもできないので」
【戸籍証明書】
由紀さんの戸籍証明書です。
生まれたのは昭和52年4月、
戸籍が取れたのは
平成16年4月、
戸籍を取得した今も
失われた27年を
埋めることはできません。
END
和久井)
戸籍を取るまで
6年というのは長すぎるのでは?
ただ、法務省も戸籍のない人が
どれ位いるか、把握できていない
つまり、把握してないのだから
対策もないわけで
由紀さんのような人が
戸籍を取るための支援制度や
仕組みも整っていないと言える
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