2007-12-26
■[学校災害]学校災害から子どもを守る静岡県連絡会第8回総会議案から
子どもをめぐる状況 発展途上国並みの最低ランクにある日本の子どもの障害死亡率
WHO統計によると、日本の子ども(0歳〜18歳)の傷害による死亡率は、世界の国々を4ランクに分けた時、発展途上国並みの第4ランクという最悪の位置にあります。
しかし、この統計を文科省も、外務省も全く意に介していませんでした。
日本での子どもの死亡原因の第1位は、病気ではなく外傷であるということは、あまり知られていません。そして、少子化対策には熱心な行政でも、子どもが成長するまで長期間かかわっている保育園・幼稚園・小・中・高校・学童保育などでの学校災事による死亡や傷害の重大な実態にはまだまだ十分な関心が払われていません。従って、先進諸外国のように、事故原因の統計を取り、その原因を解明し、予防していくという取り組みもされていません。
昨年度も、子どもの数が減っているのに、学校災害発生数は増え続けています。
平成18年年度・日本スポーツ振興センターの災喜共済給付件数は、216万件(発生件数122万件)、死亡74件、高後遺障害506件。
静岡県 平成17年度給付件最は、57766(発生件数31896件)
子どもの世界にまで広がる格差の影響、異常な事件の連発
2007年5月20日に開かれた第45回静岡県母親大会・教育関係分科会では、貧困・格差を反映する子供たちの実態が、いろいろ語られました。
母子家庭が増え、昼夜働き続ける母親のもとで、親のいない中で過ごす時間の多い子どもたち。教材さえまともに買えない、修学旅行にも行けない子ともの増加など。一方では、
学テ実施の実態などに見られるように、学ぶことが「点とり競争」化させられ、知識を広げる喜びも、進学競争のためにのみ意義づけられかねないなど、学校が、伸びやかに差別
なく、安心して成長する場ではなくならている中で、異常な事件が多発しています。
「いじめ自殺」の多発と、安部内閣教育再生会議」の「いじめ提言」
日本社会の歪みが、子ども社会にまで反映する中で、「いじめ自殺」が多発しています。
この下で安倍前内閣・教育再生会態は「いじめ問題への緊急提言j(2006.11.26)を発表、文部科学省が「問題行動を起こす児童生徒に対する指導についてj(07.2.5)という通達を出しました。
この緊急提言や文科省通達の主な内容は、いじめ加害者の出席停止、教室外退去、別室指導などの「毅然とした対応」を教師に求めており、一方で警察力との連携などにも触れています。
けれども、これでは、いじめの被害者と加害者を単純に分断し、加害者に烙印を押し、反抗心をつのらせ、子どもたちの人間関係をより悪化させたり、陰湿ないじめを増やしたり しかねません。
これに対して、「学校安全法」や「学校安全指針」を発表してきた日本教育法学会学校事故問題研究特別委員会(事故研)は、「学校安全指針モデル案」の中で、「いじめ防止に向
けた私たちの見解」を緊急提案しました。
この提案は、
2子ども集団の人間関係の修復を図る教育を
3いじめを安心して相淡できる学校内外の体制の整備(第三者機関の設置)を、などです。
2007年10月13日に福島県郡山市で開かれた第29回全国学災連・シンポジウムで、シンポジストとして報告した、森 美加さん(福岡・息子さんをいじめ自殺で失った被災者)は、「私は、息子の事実を知らなかった親です。真実を知りたい。そして二度とこんなことを起こしてほしくないと思ってきまた。」そして、「事件に向き合わせていないのは大人たちの方だと感じています。そして、このときから、いじめられる子の問題ではなく、いじめを行う社会背景、いじめをおこなう子どもたちの心の問題だと思うようになりました。
どの子どもも、被害者、加害者にしてはいけないと思っています」と発言しています。
学校現場の環境の一層の悪化
子どもと按する学校現場の状況も深刻な矛盾を抱えています。管理教育が進む中で、教職員が報告文書や資料の作成などに追われ、子どもたちと向き合う時間を大きく割かれて
いるという悩みが、どこでも共通して出されています。
教育基本法の改定による教育3法の改憲は、教育現場の環境を一層悪化させています。
政府の教育予算の削減、学校事務職員や用務員などの削減は、手どもの安全を守る点で大きなダメージとなります。
これに、教職員評価制度が追い打ちをかけて、ますます、子どもを主人公にするのびのびとした教育実践がしにくくなり、学校災事の隠ぺいにもつながっています。
21年間のとりくみの特徴と主な活動・成果・反省点
結成以来7年間の積み上げが実感きれた今年の成果
県学災連結成以来、全国学災連に代表委員を送り、全国学災連の文科省・日本スポーツ振興センター交渉や、文科省との定期研究会に学び、また、県学災連の要望や経験も伝えることを積み上げてきました。
県学災連がこの間取り組んできた県教育委員会体育保健課との学習交流会も、全国学災連の文科省との定期研究会に学んだものです。
今年の、全国学災連の交渉や定期研究会の特徴は、以下の3点です。
1第3着機関としての、学校災審調査分析検討委員会j(仮称)の設置の検討。
2学校管理下以外の、いじめ等による自殺も死亡共済見舞金の給付対象に。
3統廃合された、地方の日本スポーツ振興センター支部からも、学校災害発生数や、死亡・後遺障害の内容の資料を発表するようにしてほしい。
学校管理下以外でのいじめ、体罰による自殺
文科省は07年7月6日、「独立行政法人日本スポーツ振興センターに関する省令の一部改正」を実施し、給付の要件改善をしました。
なお、これは2年前の2005年7月9日にさかのぼって適用されます。
これは、全国学災連と県学災連がカを合わせて要請してきたことの、最近の大きな成果です。
ただし、この省令の難点は、学校や教育委員会が、この自殺を、いじめや体罰を原因としていることを認めたとき、はじめて適用されること。高校生・専門学校生には適用しないことです。
これは今後の運動の課題です。
文科省・国土交通省「プールの安全標準指針(07年8月)
この指針は、昨年の埼玉県ふじみ野市公園プールで起きた排水口事故が大きな社会問題になったことに対応するものでもありましたが、静岡県学災連が準備会時代からずっと指摘し、発信し挽けてきた問題について、やっと本格的な指針が申されました。
大きく改善された点は、学校や社会体育施設としてのプールだけではなく、都市公園のプールにも対象を広げ、さらに、民営のすべてのプールにも実施を期待するものとなっています。そして、排水口のふたを2重構造にすることや、プール管理者や監視員などへの点検項目も示されました。