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2008年5月18日

◎金大が補完医療外来 役立つ健康情報の普及拠点に

 金大附属病院が開設した補完代替医療外来は、健康食品やサプリメントなどへの関心が 高まる中、あふれる玉石混交の情報を医学的に峻別して提供する意義ある取り組みである。

 病院治療とは別に、食品や療法などに頼る患者は少なくなく、医薬品との相互作用も含 め、医療現場としては無視できない状況になっている。うたい文句通りに、その食品に効能があるか否かは患者が最も知りたい情報であり、そうした疑問に応えていくことも大学病院の使命であろう。

 金大は全国に先駆けて専門講座を開設するなど補完代替医療の草分けであり、この分野 を発展させていけば大学の看板にもなる。これまでの研究蓄積を、外来を通して地域に還元してほしい。

 健康志向の高まりを背景に、インターネットや書籍、雑誌などで健康食品やサプリメン トなどの情報が増え、厚生労働省の調査では、がん患者の45%がアガリクスやプロポリス、サメ軟骨などの食品、療法を試していることが分かった。生活習慣病やアレルギーなどの改善に健康食品を取り入れている人もいるだろう。

 その一方で、病気の種類によっては医薬品が効きにくくなるなどの悪影響も報告されて いる。安全性や有効性が証明された食品は意外と少なく、科学的な検証もないまま誇大に宣伝されているケースもあるという。

 金大では二〇〇二年に全国で初めて補完代替医療学講座を開設し、アガリクスや子宮が んのワクチン療法などについて効果を確かめる臨床試験を進めてきた。専門外来は阪大などが既に開設しているが、金大には研究の蓄積があり、人材もそろっている。補完代替医療を上手に取り入れるために健康に役立つ情報を普及させてほしい。

 健康食品については、半信半疑ながら病気の苦しみから解放されたいと、わらをもつか む思いで頼る人もいる。それは医療が患者の思いに応え切れていない一面も映し出しているのではないか。代替医療に関して医師と患者の意思疎通は必ずしも十分でない。専門外来を機に、両者が信頼関係をもって話し合える環境を整えたい。

◎子供救う「健康ランチ」 広めたい一石二鳥の運動

 先進国の人々が肥満や生活習慣病に悩む一方で、途上国の子供たちが栄養不足に苦しむ という「食の不均衡」の解消を目指して、食を分かち合うとの志が込められた「健康ランチ」が日本でも徐々に広がり、この十六日から他省庁に先駆けて外務省の食堂に登場した。

 一食六百円前後の低カロリーのランチを食べて、一食につきカロリーを減じた分二十円 をアフリカ諸国の子供たちにプレゼントするというものだ。二十円としたのは向こうの子供たちの給食一食分に相当するからだそうで、世界食糧計画(WFP)などを通して贈る。

 日本の特定非営利法人「TABLE FOR TWO(テーブル・フォー・ツー)」が 昨年から提唱し始め、すでに首都圏や関西などの民間企業や大学、地方自治体などで取り組みの輪が広がっているという。社会を楽しく生きるための知恵の一つとして大きく育てたい運動だ。

 この運動で思い当たるのは、米国の有名な「千ドルディナー」だ。第一次世界大戦後、 戦争で疲弊したヨーロッパの国々を救う目的で人々が千ドルずつ出し合い、ホテルで一緒に非常に貧しい食事をして余ったお金を贈ったのが千ドルディナーである。

 当時の千ドルは、普通の人々の約半年分の生活費に相当する価値だった。健康ランチは 、我慢した分を人助けに回す点で千ドルディナーに似ている。

 政府はともかく、米国人は募金好きといわれる。その伝統が今も続いているためだろう 、米国ではミレニアム開発に関する国連事務総長特別顧問であるコロンビア大学教授のジェフリー・サックス氏らが設立したNPO「ミレニアム・プロミス」がアフリカの貧困撲滅を目的に掲げて同様の取り組みをしている。

 日本のテーブル・フォー・ツーはそのミレニアム・プロミスとも提携している。余った お金をどこに回すかはそれぞれの自主性に委ねるとして、健康のために我慢してお金を出し合い、社会に役立てるのはよいことだ。北陸でも始めたい。


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