原油相場の高騰が続き、ニューヨークの先物市場で米国産指標油種の相場は16日に一時、1バレル127ドル台まで上昇した。金相場も1トロイオンス900ドル台を回復するなど他の国際商品の上昇も目立ち、一方でドル相場は再び下落した。原油の高値更新はドル売り・商品買いという投資資金の大きな流れの中で起きている。
サウジアラビアは日量30万バレルの原油増産計画を明らかにし、米政府は戦略備蓄用の原油購入を一時停止すると発表した。だが、市場はこれに反応せず、むしろ米国の大手証券会社が今年後半の原油相場の見通しを1バレル141ドルまで引き上げたことが買い材料になったという。
実際の需給よりも、金融商品としての原油先物に資金がどのくらい集まるかが原油相場を左右する。その構図は一段と鮮明になってきた。
こうした状況下で、日本から米国にガソリンなどを輸出する構想が具体化しつつある。
米国では原油を精製してガソリンなどの石油製品をつくる製油所の能力が不足気味だ。これが近年の米国のガソリン価格上昇につながり、ガソリン相場の上昇は原油相場をつり上げる要因にもなっていた。一方、日本では精製設備に余裕がある。これを活用して米国に製品を供給すれば、米国市場でガソリンなどの供給不安を和らげることができる。
すでに日本の石油会社は、石油需要の増加が続く中国から原油の精製を請け負い、石油製品を中国向けに出荷するビジネスを拡大している。米国向けにも相互補完の形で石油製品供給を拡大することは、国際石油市場の長期的な安定につながる方策として評価していい。
米国が戦略備蓄の積み増しを7月から一時停止する措置も、政府購入分の原油が民間にまわり商業在庫の増加につながるのであれば、原油高対策としての意味はある。
たとえ即効性はなくても、各国が原油相場過熱の背景にある将来の需給ひっ迫懸念を和らげる対策を打ち出すことは重要だ。サウジなど主要産油国の責任も重い。当面の世界の原油需要の見通しが下方修正され、現時点での大幅増産は合理的ではないとしても、原油生産能力を拡大する投資の継続は不可欠である。