バブル崩壊後に回復を続けてきた国内企業の業績に転機が訪れている。上場企業の2009年3月期の経常利益が、7期ぶりに減益となる見通しになった。経営者は萎縮するのではなく、長期的な成長に向けた経営改革の機会ととらえてほしい。
金融などを除く上場企業全体の9割が発表を終えた08年3月期決算では、前の期に比べて3%の増益を確保したもようだ。だが、今期は6%の減益に転じる見通しである。
日本企業を取り巻くグローバルな経済は、大きく変わりつつある。米サブプライムローン問題は、輸出先である米国の景気を冷え込ませた。これを受けて投資マネーはドル資産から離れ、ドル安・円高の圧力が強まった。マネーは商品市場にも流れて原油価格を押し上げた。
決算が示したのは、こうした新たな潮流に巻き込まれた企業の姿だ。米個人消費の低迷で、デジタル家電の販売に陰りが出た影響で東芝は前期、3期ぶりの営業減益だった。トヨタ自動車は今期、円高が響いて9期ぶりの減益となる。三井化学も主原料のナフサ(粗製ガソリン)価格の高騰で今期の減益を予想する。
米住宅価格はなお下落しており、米景気低迷は一過性ではないとの認識を持つ必要がある。少子化で消費減少の懸念がくすぶる国内景気の先行きも不透明で、企業は成長持続に向けた改革が急務になっている。
方向性の1つが新興国での事業強化だ。イオンが先月、国内スーパーを閉鎖する一方、アジアで店舗を拡大していく計画を打ち出したのは一例である。新興国も米景気悪化の影響は避けられないが、世界的には比較的高い成長力を保っている。
激しい競争は覚悟してほしい。「グローバルな成長」は母国での成長鈍化に悩む米欧経営者の流行語になっており、視線は新興国に集まっている。経済が未成熟で先行きが読みにくい点も落とし穴だ。千代田化工建設はカタールのプラント工事で労働者が不足、人件費が膨らんで前期は大幅な減益を強いられた。
もう1つは、業績拡大の過程で見過ごした規律の緩みを見直すことだ。電機業界などではなお、本業ではない子会社を抱えて選択と集中を終えていない企業が目立つ。たまった現金を成長投資や株主への配分に有効に活用してきたのか、需要を掘り起こす商品やサービスは生み出してきたのか、点検することは多い。
業績悪化を外部環境のせいにするだけでなく、弱点を見つけて改革する。そんな企業こそが長期的に成長してグローバル競争に勝ち残る。