中国産にはコピー品が多い。車や電話、食べ物をはじめ、日本企業の名前を真似て使用するといった行為まで含めると、あらゆるコピーが蔓延している。そんなことは中国で生活していなくとも今や多くの人が知る事実だ。ではなぜ今更私がこれを記事にするのか。ネットで公開されている音楽を中心としたコピーDVDなどの証拠写真を見ると、「中国の多くの消費者もあらゆるコピー品を望み、購入していると思っている人がいるのではないだろうか」と感じたからだ。
唯一免れた「PAMU」(パムー)の靴。画像が切れてるのはご容赦下さい。いちおう背後に注意して、緊張しながら撮っていたため、こんな画像になってしまいました (撮影者:長島美津子) 駐車場にはいつも高級車ばかりがズラリと並ぶと言われる「温州商品交易市場」(一部の人は貿易市場と呼ぶ)という名の百貨店に先日行った。その3階フロアには靴屋とカバン屋だけが50軒以上も並ぶ。日本では見かけることのない店舗設計である。実は、先日の「大連リポート」連載記事で登場した荒屋の住民から、「その階にはコピー品が多い」という情報を入手したので訪れてみたのだ。 確かに多い! 多すぎる。多い上に、その堂々とした販売っぷりには本当に驚いてしまう。 コピー品のお菓子 (撮影者:長島美津子) 日本語で言うならば……「こらっ! おいっ。この店は写真撮っちゃ駄目なんだよ。俺に渡せ!」という店主の罵声が背後で響き渡った。振り向くと、店主の妻が通路に飛び出し、「ちょっとちょっと来てぇ」とこれまた大声で叫びながら誰かを呼びに行った。すると今度は店主と店員が他のお客さんを全員追い出し、「一歩もココから出さない」と仁王立ちで私の前に立ちはだかる。正直な話、軍関係者敷地にカメラを向けて警備員に咎められた時はそんなに怖さを感じなかった。だが、この時は……かなりどころか無茶苦茶怖かった。今後どこかに写真を撮りに行く時は中国人の友人に引率を頼もうと決めた。 数秒後、女性と共に駆け付けてきた二人は、どうやら百貨店の警備員らしい。店主と奥さんが、「こいつが勝手に写真撮ったんだよ! 取り上げろ」と訴え、警備員は「おい、お前、カバンを渡せ」と怒鳴る。私はそれまでずっと黙っていたが、いい加減反論したくなった。「この店にあるのは全部ニセモノじゃないの。違法でしょ。どうして私が悪い人扱いされんのよ」。たどたどしい中国語でキレた。怖さと怒りで全身震えたが、言うべきことは言ってやろうと思った瞬間、口に出たのだ。 あさげゆうげ……なんだと思います。味はとてもまずいです (撮影者:長島美津子) 先に少し書いたが、大連では携帯電話が普及し、日本と同じように家庭でインターネットを楽しめる人が徐々に増えている中、コピーDVDを購入する人は少ないと言われる。性描写などの過激な映像をカットするといった編集を経た上で販売されている外国映画でも、安いものは2元から5元ほどで手に入るが、それでも購入者はさほど多くない。自分たちが買わないだけでなく、「コピーされたものをパソコンに入れるとパソコンが痛みますよ」と助言してくれる人までいる。携帯電話会社は有料の音楽配信サービス情報をメール配信してくるが、街で出回る商品はもちろんのこと、そういった有料の物に手を出す人は少ない。では、そんな彼らはどうやって一般の音楽や携帯電話の着メロ・着うたを楽しんでいるのだろう。 答えは一つ、タダで手に入れている。中国ではYahooでさえ堂々と音楽を無料配信している。 掲載されている歌手名や曲名をクリックすると開くページには視聴を意味する「試听」や、親切なことに「歌詞」の紹介までされている。ファイルの種類により「wma/mp3」などと表示され、視聴した曲が気に入れば、「下载歌曲」「点击下载」といった文字を「右クリック→ファイルに保存」するだけで、あっという間に無料でダウンロード出来る。IT企業の一つであるChina EC.comの社員に意見を聞くと、「Yahooですら堂々とやっているぐらいだから、あらゆる商品をコピー生産するという動きを停止させるのは難しいと思う。数年で出来ることとは思えない」と言う。 無料配信されているのは中国のものだけではない。もちろん韓国や日本の音楽も含まれている。視聴の後のダウンロードに時間が掛かる人は、「歌曲出处」(配信元のURL)を、前述のように「右クリック→ファイルに保存」すればいい。あっという間に曲はいただける。「铃声」と表現する、携帯電話の着メロ・着歌が欲しい時はネット上で携帯電話番号を登録するだけだ。 Yahoo Chinaのトップページに行き、「免费」(タダという意味)という文字をコピー&ペーストして検索してみてほしい。どれだけたくさんの無料配信サイトがあるか分かっていただけるだろう。最近では映画配信をサービスに加えたサイトもある。 こんな状況を見ていると、この国に著作権は存在しないのかと思ってしまう。無法地帯とも見える現実だが、実際には著作権法という法規は存在する。中国政府は見て見ぬふりをしているわけではない。事実、「取り締まりを強化する」といった文字が新聞に掲げられることがある。だが、国の隅々に取り締まりの目を行き渡らせるのはまだまだ先の長い話としか思えない。先日の市場体験でもそうだが、「駄目だ」とお上がいくら言ったところで、確信犯とも言うべき商人たちが考えを改めるか、消費者が拒否し続けるかしない限り、この国からコピー品は絶対になくならないと私は思う。 著作権法参考資料 Yahoo Chinaトップ 音楽配信ページ 【編集部注】記事参考資料中、関連性の低いリンクを削除しました(2006/9/27 14:45)。
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