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さまよえる湖

2008年05月17日

「仕組み」の経済学―14

 天山、崑崙、パミールの雪解け水を集め、タクラマカン砂漠の北辺を流れるタリム川は、ロプノール湖に注ぐ。だが、千年以上にわたるタリム盆地の灌漑(かん・がい)や砂漠化で、水流は中間で吸収され、ロプノールはさまよえる湖となった。

 さて、この国ではタリム川同様に上流から下流に流れる税金から膨大なカネが途中で失われている。埋蔵金騒動のあげく、与野党を問わず政治家すら、中間で税金を吸収し続けている特別会計の闇を解明できないことが分かった。

 衆議院調査部は、政府所管の公益法人の一部、4576団体を調査し、天下り役人が2万8千人、これらの公益法人への投入金額は06年前半だけで6兆円、と報告している。また、存在理由も会計処理も不明確な独立行政法人の欠損穴埋めに昨年度だけでも5兆円もつぎ込んでいる。公務員よりも高い給与を謳歌(おう・か)し、ファミリー企業と呼ばれる仲間との内輪の商売で民間を圧迫してもいる。

 我が国は拡大する税収で、国土改変に財政資金をバラマキながらも、福祉国家の体裁は保ってきたが、その果てに世界有数の借金国家となった。不祥事著しい行政組織の退廃や「後期高齢者医療制度」のように仕組みづくり能力の欠陥も顕著となっている。

 美食大国フランスを上回るスター料理店のあふれる飽食の国で、餓死者が生まれ、妊婦受け入れ拒否の病院が増大し、介護疲れの果てに老々殺人が繰り返されるなど、福祉劣化が著しい国に成り果ててしまった。この国をさまよえる福祉国家にした直接の責任は政・官にあるが、最終的な責任は、強欲で無責任な行政機構の中間搾取を許してきた国民が負うしかない。(四知)

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