「電子メールはすべて暗号化すべきだ」。映画「ザ・ハッカー」のモデルになった米国の元大物ハッカー、ケビン・ミトニック氏が16日、東京都内で会見し、メールの盗み見防止には暗号化が欠かせないと強調した。ミトニック氏が来日するのは初めて。
ミトニック氏は95年、インターネットを通じて米政府機関や企業のコンピューターに侵入し、文書を盗むなど違法行為を重ねていたとして、FBI(米連邦捜査局)に逮捕された。米国在住のハッカー対策の日本人専門家、下村努さんのコンピューターを荒らしたのがきっかけで、その経緯が映画になった。
ミトニック氏は、下村さんがFBIなどとやりとりしていたメールは暗号化されておらず、機密情報が丸見えだったというエピソードを披露。ライバル企業や産業スパイ、国家機関などによる盗み見が日常的に行われている実態を紹介した。
メールを暗号化するには専門知識が必要なため、大半のメールは無防備なままで送受信されている。ミトニック氏は「ハッカーの立場で言えば、機密情報だけ暗号化すると、それが重要だと一目で分かる」と述べ、安全性を高めるには暗号化を義務づけるべきだと提案した。
ミトニック氏は、電子メールの暗号化サービスを16日に始めた日本のベンチャー企業、ゼンロック(東京)の顧問。同社はメール暗号化の世界的な普及を目指すという。【前川雅俊】
毎日新聞 2008年5月17日 東京朝刊