産科医「過誤ない」 福島・大野病院事件結審

 福島県立大野病院(大熊町)で2004年、帝王切開中に子宮に癒着した胎盤を剥離(はくり)した判断の誤りから女性患者=当時(29)=を失血死させたとして、業務上過失致死罪などに問われた産婦人科医加藤克彦被告(40)の最終弁論が16日、福島地裁(鈴木信行裁判長)であった。弁護側が「患者が亡くなったのは重い事実だが、施術に過誤はなく、可能な限りの医療を尽くした」とあらためて無罪を主張し、結審した。判決は8月20日に言い渡される。

 弁護側は「医師の裁量権そのものが問題とされた事件。医師は時々刻々と変化する病状を判断して処置するしかなく、結果から是非は判断できない」と、起訴した検察を批判。「周産期医療の専門家の意見に耳を傾けずに立件し、医療界全体に大きな衝撃を与えた」と事件化したことの影響を強調した。

 最大の争点の「剥離を続けた判断の正否」については、「検察側証人の医師も公判で、剥離を続けるのが通常と証言した」と指摘。剥離をやめて子宮摘出に移るべきだったとする検察側主張を「非現実的な処置で、机上の空論」と切り捨てた。

 胎盤剥離時にクーパー(医療用はさみ)を使用したことの可否に関しては、専門家の証言を引用しながら「剥離を急ぎ、子宮筋層を傷つけないために使った」と妥当性を主張した。手術前、癒着胎盤と大量出血を予見できたかどうかについては、加藤被告が手術前と手術中に超音波検査を行うなど慎重な処置を繰り返したことを挙げ、予見は不可能だったとした。

 公判では加藤被告が最終意見陳述を行い、「最悪の結果になり申し訳ない。ご家族にはつらい思いをさせてしまった」と謝罪。その上で「再び医師として働かせてもらえれば、地域医療の一端を担いたい」と語った。

 検察側は禁固1年、罰金10万円を求刑した3月の論告で「継続すれば生命に危険が及ぶ状況でも漫然と剥離を続けた。安易な判断で被害者を死亡させた過失は重大」と述べた。

 起訴状によると、加藤被告は04年12月17日、女性の帝王切開手術で胎盤と子宮の癒着を確認し、剥離を開始。継続すれば大量出血すると予見できる状況になっても剥離を続け、女性を失血死させた。
2008年05月17日土曜日

福島

社会



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