現在位置:asahi.com>社会>その他・話題> 記事

釜ケ崎に自立の花 元ホームレスらが働く花屋開店

2008年05月16日08時39分

 釜ケ崎を花あふれる街に――。大阪・西成のあいりん地区(釜ケ崎)に12日、日雇い労働者らが働く花屋がオープンした。元ホームレスの就労支援をするNPOなどが「心を癒やす花を売ることで、働く自信をつけてほしい」と出資した。経営が軌道に乗れば、花を積んだリヤカーで釜ケ崎の外にも売りに行くという。

写真

店頭で花を配る石井潤一さん(左)=12日午前、大阪市西成区、南部泰博撮影

 日雇い労働者らが集まる飲食店や簡易宿泊所が立ち並ぶ大阪市西成区萩之茶屋1丁目の一角で午前10時前、「まちの花屋さん Bon」が営業を始めた。店員の石井潤一さん(60)が、近くの路上でコップ酒を飲んだり寝たりしている人たちに記念のペチュニアの小鉢を配ると、受け取った人は「花はええなあ」とほほ笑んだ。

 石井さんは「頑張って花を売り、これからは前向きに生きていきたい」と話した。

 花を売るのは、NPO「釜ケ崎支援機構」が大阪府から管理を委託された公園で植木の剪定(せんてい)などの技術を身につけた日雇い労働者や元ホームレスたち。同機構と西成区で街づくりに取り組む複数の民間会社が2月から構想を練り、出資した。Bonは仏語で「良い」という意味で、同じ名前のレトルトカレーのように人気が定着してほしいという願いを込めた。

 店舗は2階建ての1階にある約30平方メートルの元雑貨屋。経営していた女性の娘が「生前の父が『地域の発展に役立ててほしい』との遺言を残していたので」と、格安で店舗を貸してくれた。

 Bonがめざすのは、ホームレスらが路上販売し、収入の一部を生活費にあてる雑誌「ビッグイシュー」(03年創刊)の花屋版だ。当面は十数人が日給6千円で交代しながら店に詰め、アジサイ、ナデシコ、カスミソウ、ダリアなどの小鉢を150〜1580円で売る。売れ行きが安定すればスタッフを増やし、大阪市中心部のオフィス街や商店街などにリヤカーで出向くことを考えているという。

 開店の準備中には、通りかかった日雇い労働者らから「ここで花が売れたら土下座したるわ」などとからかわれることもあった。だが、開店直前の10日、花が店内に並び始めると、「買いに来るわ」と声をかけていく人が出てきたという。

 釜ケ崎支援機構の山田実理事長は「花は日々の過酷な労働や孤独感から野宿者たちを癒やしてくれると思う。そんな花を売り、この街を美しくすることができれば、働く自信につながるのではないか」と話している。(宮崎勇作)

PR情報

このページのトップに戻る