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2008年5月17日

 「金沢にはお城という文化の頂点がある」。オーケストラアンサンブル金沢の音楽監督・井上道義さんの印象的な金沢着任時の抱負を思い出す

「頂点があれば広がりができ」「日本広しといえどもない、多分ヨーロッパにもない」文化の力を持つ街だと。こちらが面はゆくなるほどのあいさつだったが、城と都市と文化の関係を新鮮に表現してくれたのを覚えている

金沢城が国史跡になることになった。答申までの遅れは今さら言っても始まらないが、遅れた分だけじっくりと、城と史跡の関係を考えてみたい。数ある国史跡の中でも、城址の意味は特別に大きいからである

第一に、城下町の構造は城の形によって決まることが大きい。曲がりくねった道路や用水、ドーナツ状に城を囲む惣構など金沢独特の都市形態こそは最大の歴史遺産である。あるいは工芸品や茶道など有形無形の伝統を生み出す力の「核」が城である

都市力の源泉と言ってもいい。高い頂を持つ山のすそ野は広い。音楽家らしい美しい表現の後に言うのは気恥ずかしいが、城は「街のへそ」である。力を込めて集中力を発揮したい。


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