沖縄で起こった米兵による少女性暴行事件を糾弾する集会が、10日の夕方から東京で行われました。沖縄の市民団体から安里英子さんが出席し報告したほか、山内徳信、神本美恵子両参院議員らからもお話がありました。集会後はアメリカ大使館への抗議デモが行われました。
目次
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安里英子さんのお話
・米軍兵士は沖縄の人が住めない高級住宅に住んでいる
・被害者を追い詰めた「週刊新潮」の心無い記事
・なぜ被害者は告訴を取り下げたのか
・裁判そのものが二次被害をもたらす可能性がある
・米軍に基地がある限りこの問題は解決しない
・できることを一つひとつやっていく
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参加者からの発言
・山内徳信参議院議員「基地があるかぎり、いっぱい問題が起こる」
・神本美恵子参議院議員「被害者に落度はまったくない」
・神奈川平和運動センター「住民投票のための署名活動をしている」
・平和の声・行動ネットワーク(入間市)「やるべきことはある」
・若者中心に活動している団体「アメリカも日本政府も誠意がない」
・日本労働党「この国の運命を握っているのは私たち自身だ」
3月10日午後、東京・虎ノ門で「米兵による少女性暴行糾弾! 沖縄を孤立させるな! 米軍基地の即時撤去を求める緊急集会」が開催されました。緊急集会にもかかわらず大勢の参加者が駆けつけ、沖縄からの報告として、安里英子さん(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会)からお話がありました。集会のあと、アメリカ大使館への抗議デモが行われました。主催は緊急集会実行委員会(発起責任団体は「自主・平和・民主のための広範な国民連合」)。
安里英子さんのお話
安里さんのお話によると、今回の事件は若者たちが大勢集まる町の真ん中にあるミュージックタウンで起きており、基地の外には米軍の住宅がたくさん建っていて、加害者もそこに住んでいたそうです。沖縄に住む米軍関係者は4万4,963人。その中の1万7,048人が基地の外に住んでいることを、今回の問題が起きてから防衛省が公表したことを明らかにしながら、外と内側の区別がなくなっている状況の中で起こった事件であるとの認識を示しました。
安里英子さん
米軍兵士は沖縄の人が住めない高級住宅に住んでいる
沖縄の民間アパートの家賃は4〜6万円ですが、米軍住宅の家賃は26万円ぐらいで、最高額は46万円。米軍は沖縄の人が住めないような高級住宅に住み、気ままな生活ができることから、基地外に住むことを希望する米兵が増えているそうです。そのお金はどこから出ているか。日本の思いやり予算から出ている。つまり、日本が米軍にお金を出し、基地外の高級住宅に住む米兵が起こした事件であることを認識する必要があることを強く訴えました。
今回の事件では、インターネット上での被害者へのバッシングがあったと述べ、なぜついて行ったのか、ついて行った者が悪いといった、被害者に対する非難がものすごい数に及んだことに言及しながら、こういう事件が起こると必ず被害者への誹謗中傷が起こるが、今回もそれが目立ったことを指摘しました。
被害者を追い詰めた「週刊新潮」の心無い記事
被害者に付きまとい、家族のプライバシーを記事として書いた「週刊新潮」は、被害者と一緒にいた友だちにも付きまとったそうです。その結果、被害者だけでなく、まわりの中学生までバッシングにあい、被害が拡大したことによって、学校や町が異様な雰囲気に包まれ、被害者が告訴を取り下げざるをえないような状況に追い込まれてしまった、との認識を示しました。
事件が起きたとき、女性たちはすぐに抗議行動を起こし、記者会見を開いたり、あちこちで集会を開いたそうです。しかし、その後被害者が告訴を取り下げたため、「どう言ったらいいか、ある意味の混乱が生じた」とそのときの状況を述懐しました。「抗議をやめなさい」とか、「被害者を守らなければならない。告訴を取り下げたのに運動が被害者を追い詰める」といった民主団体などからの働きかけや、「少女の立場に立てなかった、守ることができなかった」などとするマスコミ報道があり、どうしたらいいのか悩んだことを明らかにしながら、「なにが事実か。いま起こっていることはなにか。昨夜も遅くまで仲間たちと話し合った」と語りました。
なぜ被害者は告訴を取り下げたのか
告訴を取り下げた理由について安里さんは、「身を守るため」との見方を示しました。このような事件が起こると、すぐに防衛省が駆けつけ、事件をもみつぶすために示談にもっていくことに言及し、闇から闇に葬られ、表に出ているものは氷山の一角であり、実際はその何倍もの事件がもみ消されている、と語りました。
安里さんのお話によると、アメリカの軍隊を置いている国の女性たちのネットワークがあり、2年に1回集って国際会議を行っているそうです。そこでは性暴力や国際条約の法的な問題などが話し合われており、アメリカ政府の報告によると、フィリピン、韓国、日本など、軍隊を置いている国の性暴力は約3,000件あり、06年は申し立てが2,947人で、告訴取り消しが670人となっていて、いったん告訴したあと、途中で取り下げる事例が増えていると語りました。
裁判そのものが2次被害をもたらす可能性がある
その理由として、加害者が軍人の場合、軍隊(からの)圧力や恐怖心があり、その中で被害者が裁判に訴えることは相当の重圧があり、裁判そのものが2次被害をもたらす可能性があることから、中学生がそれに耐えられるのか、としながら、被害者に対する心のケアの制度のない日本では、被害にあっても告訴を取り下げざるを得ない状況にあることも問題があると指摘しました。
今回の場合、学校がポイントとなりますが、新聞に載った関係者のコメントを読むと、「安全教育を徹底して行う」となっており、危ない人にはついていかないという教えは、危ない人について行った被害者が悪いということになってしまうので、ますます生徒を追い詰めていくことになる、と述べ、学校教育が生徒の立場に立っていないことへの懸念を示しました。
米軍に基地がある限りこの問題は解決しない
安里さんは、米軍基地がある限りこの問題は解決しない、と述べ、基地撤去以外に解決の方法はないことを強く訴えました。(基地があることが前提となっている)地位協定見直しではなく、安保条約を直ちに廃棄すべきであり、基地撤去が多くの沖縄の人々の叫びであることを、重ねて強く訴えました。
安里さんは、これまでも米軍の犯罪がうやむやにされ、もみ消されてきたことや、裁判になっても軽い罪で国に帰って終わりといったことを繰り返してきたことに言及し、犯罪者は国際法廷で裁くべきであるとの考えを示しました。今回の事件について沖縄タイムスや琉球新報などが、告訴を取り下げたあともきっちりした論調でこの問題をとらえ、みんなの意見を集約して伝えていたことを高く評価しました。
できることを一つひとつやっていく
今回の事件を日本政府がもみ消したいと思っているのは、この問題が米軍再編に与える影響を恐れているからであるとの認識を示しながら、県民の基地に対する反発は強まっており、3月23日の県民大会では、教科書問題のときのように超党派は難しいが、基地の前での女性たちの3日間の座り込みなど、抗議行動を起こすことを明らかにしました。
安里さんは、「被害者が悪いというのはいったいなんなのか」と厳しく問いかけながら、心無い誹謗中傷に立ち向かうためにも、小さな集会をもち、小さな声がまとまっていくような模索を続けていきたいとし、「沖縄の闘いは模索しながらの闘い」であるとの認識を示しながら、まるで総レイプを受けているような精神状態にある中で、いまできることを1つ1つやっていくことでつながっていきたい、との思いを訴えました。
(次ページ「
参加者からの発言」に続く)
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