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【社説】

中国地震救援 オールジャパンの力で

2008年5月17日

 中国の四川大地震で日本が派遣した国際緊急援助隊が十六日、被災地入りした。これに続いて政府、民間を問わず日本全体の力で中国に人、物、カネの支援を行い、隣人の苦境を救いたい。

 消防や警察、海上保安庁などで構成する援助隊は不眠不休で四川省青川県の現場に急行した。

 海外からの救援要員受け入れをめぐり、中国政府の判断は揺れ動いた。生存者救出のカギとなる地震発生後七十二時間を過ぎてからの現地入りになったのは残念だ。

 しかし、今はこれをあげつらうより、援助隊が自らの安全に注意し一人でも多く人命を救助するよう健闘を祈りたい。中国政府には一部の国だけでなく、ただちに世界各国が申し出ている救援チームを受け入れるよう望む。

 被害の深刻さを見ると援助隊は六十人規模で十分とは思えない。生き埋めの被災者を救援するほか、負傷者搬送や治療、感染症の予防など多くの仕事がある。

 政府からの追加要員も必要だが多くの民間組織やボランティア団体も救援の経験があり、現地入りを希望している。中国は一般に民間団体の受け入れには慎重だ。政府が民間団体の要望を集め、受け入れを要請してはどうか。

 政府は無償資金協力として五億円相当の物資、資金を提供することを決めた。多くの企業や民間団体も義援金を集め、救援物資やサービスの提供を申し出ている。

 これらも各団体がばらばらに行うより、政府がまとめて公表し日本全体の意思を示した方が効果的ではないか。救援要員やボランティアの派遣には多額の資金が必要だ。人の活動と善意のカネを結び付けるのも政府の仕事だろう。

 今回の地震で中国政府は報道規制を行わず、外国メディアの現地取材を認めた。学校が崩壊して生き埋めになった子供たちや、わが子の死に泣き崩れる親たちの痛々しい姿は人々の心を揺さぶった。

 日本のインターネットでは当初見られた冷ややかな書き込みは姿を消し、被災者に同情を示し救援を求める声が圧倒的だ。中国のインターネットでも日本に広がる救援の動きに「日本人が、こんなに善良とは思わなかった」など日本を見直す声が増えた。

 中国への救援活動にオールジャパンの力を示せば、中国の人々の日本に対する見方も大きく変わる。胡錦濤国家主席の来日でもなしえなかった、両国国民の心を近づけることができるに違いない。

 

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