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【主張】新銀行東京 金融庁検査で実態解明を
金融庁は、多額の累積損失を抱えて経営が悪化している新銀行東京に対して初めての立ち入り検査に入った。
再建への道筋が不透明なまま、東京都議会与党の自民、公明両党が石原慎太郎知事ら都側の言い分をあっさり認め、都民の税金を投入した新銀行である。金融庁は厳しく検査して経営実態を明らかにしてほしい。
立ち入り検査は、今月末に発表が予定されている3月期決算の内容が対象で、検査期間は1カ月程度の見通しだ。
都は経営再建を名目に今年4月末に新銀行東京に対して400億円を追加出資した。これによって、新銀行は懸案だった資本増強を終え、今後は1016億円の累積損失を穴埋めするための減資を予定している。
だが、検査で資産査定の甘さが指摘された場合、すでに公表している最終赤字の見通し額の下方修正を迫られ、減資が予定通り進まない可能性もある。
巨額の税金投入を受けた以上、当然ながら第三者による経営実態の評価は必要である。融資審査におけるリスク評価や管理体制、法令の順守状況などが重要な検査項目だ。金融庁はこうした点を踏まえて、資産内容を徹底的に洗い出さなければならない。
都議会の審議でもあいまいなまま残された経営責任の問題もある。経営悪化の原因は旧経営陣にあったのか、それとも無理な業容拡大をせまったと批判を浴びている都側にあるのか。
審査をないがしろにしたずさんな融資姿勢とともに、不適切な紹介融資が横行していた疑いも指摘されている。金融庁には、新銀行の企業統治がきちんと機能していたかどうかについても十分に調べてもらいたい。
検査後、新銀行は新たな資産査定に基づいて提携先や譲渡先を探すことになりそうだ。規模を大幅に縮小する再建計画はあるものの、知事自身が「単独再建は難しい」と認めているからだ。
都議会は追加出資の可決にあたり、「追加出資する400億円を棄損させることのないよう、適切な監視に努める」と条件を付けている。検査の結果次第ではその条件を守れない恐れが強まる。
延命はもう許されない。都は検査を機に、今度こそ新銀行の幕引きに向けたシナリオをしっかりと用意しておくべきだ。